ジーメンス その2  脱原発表明

3.11

先に紹介したジーメンスのレポート、”One year after Fukushima –Germany’s path to a new energy policy”は4章立て。
まず、エネルギー部門CEOであり、かつジーメンスAGの取締役でもあるミハエル・ズイス氏の今後の見通し表明、次に「フクシマから1年、日本の電力供給についての寸評」、三番目が「フクシマから1年、ドイツの新しいエネルギー政策」で、これに一番の力点が置かれ、8ページのレポートの半分以上を占めています。そして最後にフクシマが世界のエネルギー政策に与えた影響について中国、米国、フランス、スイスの状況について簡単に触れられています。



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最初の表明は実に格調高く格好いい。

新しいエネルギー政策への移行はドイツ人にとって世紀のプロジェクト。それは妥当で、かつ実行可能。でも、その実現には問題が山積しています。喫緊のスケジュールや配電網の拡充は最大の課題となることでしょう。そして、ドイツがいかに挑戦しているかについて、他の国々の注視するところとなるはずです。(有田試訳)

流石、ジーメンス。問題があるという割にはかなりの自信ですね~。

日本については現状説明のみ。フクシマ事故のせいで原発拡大・推進政策の見直しに迫られ、再生エネルギー利用の拡大が進むだろう。今夏には原発比率についての見解が出てくることになっている(2030年代に原発ゼロにするかどうかという議論のこと)・・・と簡単に触れるのみ。

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このレポートの中心は何といってもドイツのエネルギー転換とジーメンスの対応についての箇所ですが、その要約は既に先のズイス氏の表明そのものに尽くされています。

レポートを拾い読みすると、

もともとドイツは2022年までに原発を完全ストップさせるべく動いていたが、フクシマをきっかけにして、2011年3月に「原子力モラトリアム」を宣言し、30年以上稼働していた8つの原発を停止し、残り9原発を2022年までに順次廃止していくことにした。

8つの原発を止めたことで原発のシェアは22%から18%にダウン。一方で、再生エネルギーによる発電比率は16%(2010)から20%(2011)にアップ。ソーラー発電比率は2010年から1%アップで全体の3%となった。等々

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次に、脱原発のエネルギー転換のリスクとして考えられる、1)官僚政治による障害や遅延、2)投資動機や計画の信頼性に対する欠如、3)エネルギーコスト上昇によるドイツ企業の国際競争力に対する脅威 について、1つづつ丁寧に杞憂であることを説いています。

曰く、脱原発のエネルギー転換こそ他国のモデルになるものだし、再生エネルギー源を重視する輸出中心国家が国際的にも競争力を持ち、革新的で高効率なテクノロジー市場に突き進むことを示すことにもなるはずだと、なかなか前向きです。この辺は、原発にしがみついたままの日本企業に是非読んで欲しい箇所ですね。

加えて、レポートでは電力不足の危険性や必要設備の巨額投資が必要になるのではないか等々について、それらが問題ではないことも1つ1つ解説していきます。そしてジーメンスこそが、エネルギー転換の強力なパートナーだと述べ、フクシマを契機にした脱原発について実現可能であることを強調しています。

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脱原発を選択し、エネルギー政策の転換を進めているジーメンス。一方で、日本企業は3.11&フクシマでいったい何を学んだのか。リスクとカタストロフの違いについて未だ理解できないのは何故か。

メガソーラーの愚かさ加減は既に指摘した通り。10年先20年先を睨んだ時に、原発抜きのエネルギー源についてどう考えていけばいいのか。

先日、「日本企業の没落というのは円高とかそんな現象面だけでなく、そもそも将来ビジョンの誤りにある」と云いましたが、このジーメンスレポートを見ると強くそのことを感じます。

3.11で大きく世の中が動き出した、でも日本の大企業は未だにそのことに気づいていない等々ということを実感する資料としても最適です。

(追記)ほんじゃジーメンスが目指すエネルギー転換の内容とは何か。それについては改めて別項で。