メガソーラーは発想がダメ

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孫正義さんが大金出して地方自治体といっしょにメガソーラー発電所を考えているそうな。残念ながら、この発想はアウト。だって、ソーラー発電とは分散型技術そのもので、そこにこそ自然エネルギー普及のキモがあるから。(第二稿。 ソーラー価格の未来についての記述をいじりました)

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なぜメガソーラーの考え方がまずいか。

メガソーラーとは一箇所にソーラーパネルをぎょうさん並べて大型ソーラー発電所を作るという発想です。大型のダム発電所や火力発電所の考え方と同じで、そこから消費者の手元まで送電する仕組みが要りますから、送電ロスまで考慮した発電能力が要求されます。その分、能力の大きなでっかい設備となりますので、派手好きの人には受けますし、関連業界としてはウエルカムでしょう。NHKやシャープなんかが解説しているものによく登場するタイプの仕組みです。いわば、自然エネルギー版の巨艦巨砲方式。

ソーラー発電は太陽光エネルギーを使って電気を作り出す仕組みです。太郎の屋根にも花子の屋根にもサンサンと降り注ぐ公平さ。大がかりな仕組みはいりませんし、危険な廃棄物を出すこともありませんから、居住地でも安心して使えます。こういうエネルギーは作った所でそのまま消費するのがベスト。だって、大規模な送電システムで使うには無駄が大きくなりがちだから。

要するに、メガソーラーではなく、地域別の分散ソーラーを導入する方がずっと有用だということ。送電時の電気ロスもほとんどないし、システムも軽微、そして費用効果の実現も早い。いっしょにガスタービン発電やミニミニ水力発電を組み合わせれば地域発電所としてさらに効果的でしょう。

戸別導入が必ずしもベストではないというのは地域の事情を勘案してのことで、比較的小規模な送電グリッドを使ればベターです(これもまた、スモールグリッドなんて商売物ではなく、スモールスモールスマートグリッドだと云っておきましょうか)。おまけに既存の送発電ラインと同化しながら展開できる強みもある(系統連携)。

そこらの家々、工場、ビル毎にどんどんソーラー発電を採用し、コストをどんどん下げていけば、クルマを買うような感覚からもっと気楽に冷蔵庫や洗濯機を買う感覚で導入できるようになるでしょう。またソーラー発電でできた直流をそのまま活かす電気機器の開発販売の展開とか、ソーラー発電から見た地域スケールの検討とか、そんなものの方に力を注いだ方が有効ですし、メガソーラーのようにお金儲けする人が一部に偏ることもありません。どちらが原発と対抗できる技術なのか、考えてみて欲しいものだ。

以前、コンピュータ社会では高速な大型コンピューターをどんどん作ればいいという考え方がありました。IBMや日立富士通等が取り組んできた分野ですが、その後分散型のパソコンネットワークの方がコスト的にも優れ、効果もすぐ現れ、実用的であることが判明し、今に至っています。グーグルなんかパソコンサーヴァーで世界制覇したくらいですもんね。コンピュータ資源を有効に活かすためには集中型ではなく分散型の方に利があったということで、ソーラー発電にも似たような雰囲気を感じます。

80年代にパソコンがスパコンを凌駕するなんて考えた人はどれだけいたのか。スパコンを選んだIBMや日立などがどういう運命を辿ったか。孫さんはパソコンの隆盛に賭けた人間の一人だったはず。パソコンとソーラー発電の共通点についても考えて欲しいものです。

誰が孫さんにメガソーラーを吹き込んだのか知りませんが、巨艦巨砲方式のメガソーラーはソーラー発電の根本とは相容れないものがあること、パネル屋さんや大手の関連業者を利するだけのものであることを誰か教えてあげて下さいませ。そうでないと孫さんは、自然エネルギー利権屋さんに翻弄された損さんになってしまいそう。心配です。