フェア・ゲーム

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フェア・ゲーム [DVD]ちょっと息抜きで映画を1つ。「フェア・ゲーム」。
911の後、元米国大使がイラクには大量破壊兵器はないことを証言したら、ブッシュの側近がその事実を誤魔化すため告発者の妻がCIAの捜査官であることをメディアにリークするという破廉恥な事件がありました。それに基づいた物語。元大使にショーン・ペン、その妻ヴァレリーにはナオミ・ワッツというキャスティング。お遊びなし直球勝負の映画です。

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元米国大使ジョー・ウィルソンは副大統領側近に頼まれ、二ジュールへ。「イエローケーキ」(ウラン鉱石)がイラクへ横流しされているのではないかという疑惑を調査するのが目的でした。イラクが大量破壊兵器(WMD)を準備しているという証拠固めだったんですが、その形跡はありません。元大使がそのことを報告したら政府はそれを採用せず、逆にイラクはWMDを持っていると公表。

ガセ情報でイラクが攻撃され人々が殺されていくのを知った元大使は、政府発表がおかしいことを新聞に発表(2003年7月「What I Didn’t Find in Africa」)。焦ったブッシュ側近連中は真相を隠し話を混乱させるために元大使の妻がCIAのエージェントであることをメディアへリーク。事実、妻のヴァレリーさんはCIAのトップエージェントだったため、進行中の作戦仲間や関係者は一気に危険な状況に陥ることになりました。まるで小説のような、実際にあった話です。

あろうことか、CIA幹部はガセを流す政権を正そうともせず、イラクでの殺戮を正当化し、おまけにヴァレリーさんや彼女の関係者を見殺しにしてしまいました。M:Iみたいに「君または君の仲間がどうなろうと当局は関知しない」ってやつなんでしょうか。でも、国家に尽くすスパイが国家に裏切られたらやってられないわな。

CIAのエージェントをばらすことで国家的危機に陥るよりも、自分らのウソを隠蔽する方が大事だったのか。ブッシュの側近とはチェイニー副大統領にリビー補佐官、それにカール・ローブ顧問ら。

「戦争を開始した米国教書の内容と私の妻の名前、どちらを覚えているか」と元大使が講演会で観衆に尋ねると、ヴァレリーさんの名前の方にほとんどの人が手を挙げるシーンがあります。そこで彼曰く、政府はイラク大量破壊兵器があるとウソをついた話題から話をそらすために、妻のことを持ち出したのだと説明しています。この演説のシーンはなかなか素晴らしい。

Fair Game: How a Top CIA Agent Was Betrayed by Her Own Government戦争というのは国家によるウソやデマカセで始まる、というのは古今東西よくあること。この手のイカサマは時の権力者の常套手段なのでしょう。旧日本軍の盧溝橋事件もそうだし、この「フェアゲーム」もその一例として覚えておく必要がありそうです。

真実を知る立場にある関係者はどう立ち向かったらいいのか。そこが問題です。この「フェア・ゲーム」の素晴らしい所は、国家に尽くしたにもかかわらず裏切られた個人・家族の姿を淡々と伝えることで、その一例を示しています。お薦め。

ところで、最後のクレジットに入る前に画面が一瞬ブラックアウト。そしてその次に始まる映像にちょっとサプライズ。ここの演出がいい。なかなか感動的でした。

右は、原書のFair Game: How a Top CIA Agent Was Betrayed by Her Own Government 。ヴァレリーさん御本人、ナオミ・ワッツに劣らず美人ですね。別書には女ジェームズ・ボンドって説明もありました。良い悪いは別として、米国ってここまでオープンになる国なんですねぇ。