福井と京都、あるいは滋賀 地元はどこだ!

.opinion 3.11

地理の問題です。第一問は、「大飯原発がある府県はどこでしょうか?」

 福井県です。これは簡単ですね。

じゃ第二問。「福井県の県庁所在地と京都市ではどちらが大飯原発に近いでしょうか?
 あるいは滋賀県の県庁所在地ではどうでしょうか?」(第二稿)

・・・

 答は、「京都市や大津市の方が福井市よりも大飯原発に近い」。

原発地元県である福井県の県庁所在地は福井市にあり、大飯原発から直線距離でおよそ75km。一方、京都市は約60km、大津市もほぼいっしょ(私が住む大津市北部なら50km以内; 初稿では大津市の方が近いとしましたが、滋賀県庁と大津市役所を取り違えていましたので書き換え)。

福井県は原発地元県として数々の公的補助金を得ていますし、311の報道によると関電から醜悪なウラガネも相当出ていそうです。お金に色がない以上、原発地元ということで福井県の財布が裕福なのは事実でしょう。その福井県、福井市の町並み、道路幅が広くかなり立派であることに疑問を感じたコメントを昨日読んで、なるほどなぁ〜なんて、私も納得してしまいました。

その福井市よりも大飯原発からの距離がずっと近い京都や滋賀。これらは地元県ではないので、何のお金も入ってきません。

昨年の311で原子力発電の安全性に対し、多くの人が疑問を持つようになりました。また、原発の必要性や存続の是非についてもノーという声が増えてきています。加えて311で明らかになったのは、地元という概念の曖昧性。

東電福一原発は多くの福島県人の生活や未来を奪ってしまいましたが、飛び散った放射性物質の被害は福島県だけではありません。ところが福島県以外は地元県ではないため、賠償や補償については曖昧か、あるいは全くなしという有様です。北関東地域や千葉県なんかはまさにそう。農業被害みたいなものはまだ被害額を算出できるから賠償要求できるのかもしれませんが、福島県で提示された、あの不十分極まりない生活補償でさえ県外では全く考慮されていません(例外は宮城県丸森町)。

要するに、原発事故が起きたら地元県以外は金銭的にドツボ。

京都府知事や滋賀県知事はそのことに気づいた。だからこそ、国にあれこれ注文をつけているわけであって、彼らが原発反対とか脱原発だというわけではないでしょう(滋賀県知事は「卒原発」なる珍妙な言い回しをしていましたね)。要するに問題にしているのは、事故が起きた場合ちゃんと補償してくれるのかどうか、あるいは隣接県にも原発対策費を寄こせということなのでしょう。

地図を広げながら、「地元」という線引きが持つイカガワシサをよくよく考えてみて下さい。いったん原発事故が起これば、近隣の生活だけでなく広範囲に水も空気も食べ物も奪われてしまうのです。がれきの全国拡散にいたっては被害規模は全国津々浦々。つまり、地元というのは原発がある地方自治体のことではなく、日本全土だということ。世代を超えてこの国の民が生き残りたいなら狭い範囲に地元を限定してはなりません。

〔追記)最後の一文について、地元範囲を広げてみんなにお金を配れという意味なのかというコメントを受け取ったのですが、それは違います。地元範囲が全国であるのなら、やっぱり原発はダメだよねという風にご理解下さい。
東電福島原発による放射性物質が太平洋を汚染したり、ジェット気流に乗って世界を汚染したことを考えるなら、地元という範囲はさらに曖昧になり、全世界にまで拡大する必要だってありますね。