御前崎市の言い分の裏にはお金
2011/05/08
政府発表の浜岡原発の停止(再稼働見送り)要請を受け、原発推進派は、電力が足りなくなるゾとか、中電は法的強制力のない要請には従うなとか、いろいろ喧しい毎日です。その浜岡原発がある御前崎市の財政を少し覗いてみましょうか。要するに、原発関連交付金はどれくらい入っているかという話。
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6日夜、菅首相は静岡県にある浜岡原発のすべての原子炉停止を中部電力に要請しました。これを受けて、静岡県内の自治体の反応はどうだったかというと、静岡県知事は英断だと評価し、牧之原市、菊川市、掛川市、藤枝市の地元自治体も、画期的、適切、妥当、肩の荷が下りた等と歓迎しています。
ところが、浜岡原発がある御前崎市だけは別でした。市長は「「原発交付金に依存する自治体財政はどうなるのか、困惑を通り越してあっけに取られるばかり。(中略)国策に従い原発を受け入れてきた自治体はどうなるのか。中部電力はどうするのか聞きたい」と怒りをあらわにした」とのことです。(毎日新聞 5/7他)
ぎむりさんは「自治体間の反応のこのコントラストはいったい何を意味するか。言うまでもない、金である。」と喝破していましたが、まさにその通り。以下、具体的に示しましょう。
ちょうど明日店頭発売されるダイヤモンド誌(2011/5/14号)に御前崎市の2011年度予算の内容について一覧が出ていました。
一般会計当初予算 | 167億8000万円 |
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中電からの固定資産税 | 45億7000万円 |
国からの原発関連交付金 | 20億8100万円 |
県からの原発関連交付金 | 4億7000万円 |
原発関連の交付金累計 | 261億円 (07年まで) |
上の表は週刊ダイヤモンド2011/5/14のp.43の表から抜粋しましたが、本日付けの新聞にあったのは同じニュースソースみたいですね。
上の数字をみてわかるように、御前崎市の一般会計の4割強は原発関連のお金で成り立っています。これでは原発がなければ自治体そのものが生きていけません。呆れるほど、ス・サ・マ・ジ・イ。当初は原発誘致で地元が潤っても、いずれ廃れていったのが東電福島原発周辺自治体の話なんですが、残念ながら御前崎市長はそのことを学んでいないようです。
なぜそんなにまで原発依存になってしまったのか。いくら危険でもお金さえ入ってくればオッケイだと考えたのでしょうか。いや、違うな。市長も市民も原発はそれほど危険なものではないと甘く見ていたんでしょう。中電も国も安全だというし、お金もジャブジャブくれるし、こんなウマイ話に乗らないのは損だと思ったんでしょうね。
でも、そうじゃないことが今回判明したんじゃないですか?それともまだ東電福島原発のは想定外の事故で、静岡の浜岡原発では起こらないとタカをくくっているんでしょうか。今回の事故を受けて御前崎市では市内4箇所で説明会を行ったそうですが、原発を即時停止しろという声が出たのは1箇所のみだったそうです。御前崎市民も自分の近くの浜岡原発は例外で大丈夫と思っているのでしょうか。
今回は幸いなことに原発の臨界事故に至っていませんが、東電福一原発の近隣自治体は避難対象になっています。おまけに福島県内の少なくない自治体では今も毎日毎日放射線被爆の危険性をおそれて暮らしていかなければならない状況です。そんな一言では語れないほどの甚大なマイナスと、電気アカアカの生活のどちらを選ぶのかと問われて、後者がいいという人がいることが私には信じられません(どこか遠くに不利益を押し付けようというフトドキ者がいるのはわかる)。
原発の危険性が過疎や赤字財政解消の問題と置き代わってしまうと、いったい何を論じているのかわからなくなってしまいます。その落とし穴に御前崎市も嵌ってしまったのでしょうか。
いくら現実がそうであっても、事故が起こらない限り安全なんだ、所詮は世の中は金だということなのでしょうか。市長だけでなく市民もそう思い、浜岡原発の再稼働に賛成というのなら、大変なことが起こった時には御前崎市は原発推進の中部電力と共犯関係にあるといわざるを得ません。そうでない市民がいることを期待していますし、市政の姿勢を変えられないと判断するのであれば、私なら、そこから逃げます。地震や津波がいつどれくらいの規模で起きるかなんて、未知の未知、つまり知ろうとしてもわからないというブラックスワンなんですから、予防原則しか生きる道はないというのが私の考え方です。