物言わぬ証拠

.opinion 3.11

再選を果たした現職東京都知事。原発推進をうたっていたので都民は原発推進に賛成ということになりそうですが、票の内訳を見るとどうやらそうではありません。

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まず得票数から見てみましょう。(敬称略、票は概数です)

1位:石原 262万票
2位:東国原  169万票 
3位:わたなべ 101万票 
4位:小池  62万票 (以下省略)

圧倒的多数で現職石原ですが、選挙時には脱原発をうたっていた東国原、渡辺両名を合わせると270万票。脱原発が現職の原発推進より勝っています。共産党の小池まで足すと非原発推進派が圧倒的です。ここで脱原発派とせずに非原発推進派としたのは、これら3名が本当に脱原発かどうか留保しなければならない理由があるから。まぁそれは、とりあえず横に置いておきましょう。

次に投票率。
今回の投票率は57.8%。つまり、投票権を持っているのに選挙に行かなかった人は42.2%で、約250万人。1位になった現職の投票数と同じくらいの人が投票していません。これら無投票層は原発についてどう考えていたのでしょうか? 

選挙に行かない理由はいろいろあるでしょう。投票したい候補者がいないという積極的拒否派、選挙に行っても世の中は変わらないというシニカル派、行くのが面倒だからのめんどくさがり派、選挙があることすら知らないドウデモイイ派、あるいは既に東京を脱出してしまった派などなど。これらはどう考えても、積極的な原発推進派とは言い難い。この無投票層を考慮しても、非原発推進派の方が現職支持よりも圧倒的に多いと考えるのが筋でしょう。

結果として、このまま原発推進することには問題ありとした人たちの方が2011年の都知事選ではずっと多かった。そう見るのが妥当です。福島第一原発の問題は、誰が知事になったかとは全く別だったというわけ。言い換えれば、物言わぬ声は非原発推進だった。そのことが明らかになったのが今回の都知事選だったということがせめてもの救いです。

ただ、非原発推進派は脱原発ではありません。その証拠として、地方選に登場した日本共産党などの公約をみて下さい。彼・彼女らの公約は示し合わせたように「安全最優先の原発政策へ転換を」。あれれ、安全だったら原発オッケイなんですか。まぁいくら隠しても日共が原発容認なのは昔からのこと。こんな事態になっても変化なしとは哀しくなってきますね。日共以外の候補は原発のゲの字もなし。脱原発派としては、入れたい候補がなくて投票所へ行きたくない気持ちになってしまいます。

ちなみに、物言わぬ証拠って話を説明したのは古くはキケロ。ベーコン卿もバルザック翁もわかっていたらしい。ブルデューさんもそうみたい(私はこの人の本は読んだことはありません)。