マイクロファイナンスその後

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ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家皆さんもご存じの通り、ノーベル平和賞は胡散臭い。最近とくに変。オバマに至っては「宣言」だけで受賞ですから奇妙の極みですが、まぁ本賞が何らかの政治的色彩を帯びていることを鑑みれば、どういう「政治」なのかを考えるのが面白いというべきところ。今回は2006年の受賞者、ムハマド・ユヌスさんについてちょっと…。

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ムハマド・ユヌス、バングラディッシュでグラミン銀行を始めた人。バングラディッシュ独立後、母国に戻り、貧困者救済を目的にグラミン銀行を開設。マイクロファイナンスという名前を広く世界中に広めました。

普通の銀行とどこが違うのかというと、彼の言い分では「一般の銀行のやり方を逆にしてみた」とのこと。まず顧客の元に銀行から出向く。また借り手である顧客の資産や負債は問わず、どれくらい貧しく、蓄えを持っていないかを示せばよいという。そうすることで、借り手やその借り手に頼っている人たちの生活を変えるというゴールに向かうというのです。

貧困のない世界を創る具体的には本の中で紹介されているのでそちらを参照していただくとして、たしかに話は面白い。最初読んだ時、正直そう思いました。日常生活のためではなく、ささやかな事業を興すための資金提供という視点も素晴らしい。

でも、何か違和感がふつふつふつ。格好良すぎるとか、そういうことではありません。良心的な人や篤志家は世の中にたくさんいますし、アイデアがあれば凄く面白いことができるはずだと思いますが、もっと基本的なこと。たとえば、グラミン銀行みたいな融資内容でホンマに巧くいくんかいなぁ、それでみんなが幸せになれるのかなぁ、という疑問です。その後ユヌスさんがノーベル平和賞を受賞。あれっ、何か変だなぁ。だって、平和賞って胡散臭い賞ですからね(苦笑)。

世界経済を破綻させる23の嘘そんな私の疑問について、前出のハジュン・チャンさんが「世界経済を破綻させる23の嘘”」で答えていました。残念なことにユヌスさんの当初の思惑とは現状は違ってきたようです。

最近の調査によると、「…30年経つというのに、それが借り手の生活をはっきりと改善したという確かなな証拠を得ていない」(チュンさん)で、グラミン銀行が目論んだ携帯電話事業にしても時の経過とともに利益を出せなくなっているとのこと。貸し出し金利もかなり跳ね上がって、ほとんどサラ金状態とか。

チャンさんによると、発展途上国の貧困者は高度なスキルもなく使える技術もわずか、マイクロクレジットで集められる金額も少ない。従って始められるビジネスも限られた範囲も単純なものしかない。多くの者が同じビジネスに参入するとビジネスそのものが利益を上げられなくなる、これが実際だったと喝破しています。私の違和感は当たりだったようです。

じゃどうしたら成功するのか。チャンさんの本にもそれだ!という解はなさそうですし、(当然ながら)私にも全くわかりません。う〜〜〜〜ん(腕組み)。