タートル その2 失敗と成功

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伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術タートルの2回目。
儲けの方法を習ったのに、何故上手くいく人とそうでない人に別れるのでしょうか? 理由はある意味簡単。頭では理解しても、それを実践できないから…、ここに尽きます。この話、トレードだけの話じゃないような、そんな感じ。

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話を進めるため、デニス&エックハート両氏がタートルズに教えたトレード手法を整理しておきましょう。

まず、対象は商品先物、通貨先物、株価指数、米国債など。取引ポジションサイズは、投下資金の1%が20日ATR(真の値幅)相当になるように計算。エントリーは2つ方法があって、1つは20日プレイクアウト(20日高値・安値で買ったり売ったりする)、2つ目は55日プレイクアウト。ストップはATRの2倍、つまり総資金量の2%相当分。相場が有利に動けばストップは移動させます。エクシット(退出)は、エントリー1では10日プレイクアウト、エントリー2なら20日ブレイクアウト。細かな取引追加方法などの指定もありますが、まぁだいたいこんなところです。(出典:上に紹介した本より)

要するに新高値や新安値で売り買いする方法で、それに合理的な資金管理方法が組み合わされているというものです。特筆点としては、取引サイズとストップに日々の値幅の20日平均を対応させることで、個々のトレードと資金の損失(ロス)との整合性がわかりやすくなっていることでしょうか。

まぁ面倒な話はさておき、このタートルメソッドを使った研修生が10数人いて、なぜ同じ成績を残せなかったのか?そこが問題です。といいつつ、トレード経験がある人にはだいたい想像がつくでしょ?。

理屈からいえば、誰もが同じ点で売り買いしているのなら、儲けも損も変わらない。でも、ある人は出てきたシグナル通りに売り買いしているのに、別の人は手をこまねいていたり無視したり、うまくエントリーしてもエクシットがルール通りにできなかったら、同じ結果にはなりません。タートル研修生に起きたのは、まさしくこれでした。

なぜ手が出ないのか、どうしてルール通りに手仕舞いできないのか。理由はいろいろあるでしょう。そんな高値を買うなんて無理だ・そんなことをしたら失敗しそうだと不安に感じたり、こんな場合に手を出すのは理由がない等と「知識や教養」がブレーキになるというような「大人の対応」もあるでしょう。あるいは、まだまだ儲かるから退出は先に伸ばそう等と欲が出てくることもあったのでしょう。

でも、未来は誰にもわかりません。期待通りの結果になるかどうかは後でしかわからない。わかった時には既に遅し。トレーダーとしてできることは、いったん決めたルールを、とりあえず規律を守って進めるしかありません。個人的な裁量で相場を張るのなら、はじめからルールやシステムは意味がないとデニスさんらはタートルに教えていたとのこと、もっともな話。「結果偏向」に陥るな、正しく間違えというのはそういう話ですね(できることなら間違わない方がいいのは当然です、念のため)。

いくらルールに従えといっても、最初のルールが妥当なものでなかったら? 教えたタートルメソッドはデニス&エックハートが大金持ちになった、まさしくその方法ではあったのですが、完全完璧というわけでもありません。相場環境が変わったら使い物にならなくなることだってあるでしょう。そこに疑いを挟むとルールベースのトレードそのものが成り立ちません。あるメソッドがきちんとワークするかどうか、前もって徹底的にチェックしておく必要があるのですが、それは別の話題。(注)

とにかく、タートルメソッドを遵守した研修生はお金儲けができたけど、そうでない者はそれなりにしかならなかった。これがタートル実験の結果でした。ただ、トレード方法そのものを教えることは可能だったというのがデニス&エックハートさんの結論で、トレードの成否を分けたのは、ルール通りにできるかどうか、そういった規律の問題であったということでしょう。

私、相場の道に入り込んで思うには、トレードとはメソッドの良し悪しではなく、心理的な強さの方が大きな要因であるということ。そういう観点でいうなら、やはり誰もが同じ方法を知っても結果が違ったという「事実」にはさもありなんと思います。そのメンタルコントロールができないから頭が痛いのですが・・・、奥が深い。

(注)当時はコンピュータを使って特定の方法がワークするかどうかを調べるのはほとんど困難でしたが、今は可能です。そこで、データ分析してみると現在の相場では先のタートルの方法はうまくワークしません。とくに前世紀末辺りから難しくなってきています。でも、少しいじればまだまだ現役で使えるという意見には賛成します。ちなみに私はこの方法を採用していません。