タートル その1 「大逆転」

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大逆転 [DVD]伝説のトレーダー集団、通称タートル(ズ)の話。
約30年前、商品トレーダーのリチャード・デニスさんとウィリアム・エックハートさんが「有能なトレーダーは養成できるのか」という賭けをします。その決着をつけるため、全米から応募していた数千人から10数名を選抜し、彼ら2人の儲けを生み出してきたトレード手法をまるごと全部教えてしまうのです。太っ腹ですね。結果、「養成可能」だったという結論を出していますが、実際のところは微妙です。

それはさておき、実はこの話には前段あり。そして、それは「大逆転」という映画になっています。、原題は「Trading Places」…。

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映画の舞台はウォール街、そして取引も商品相場。そこで成功し財を築いた2人の金持ちがある賭けをします。「成功は血筋によるものなのか、それとも環境なのか」、自分の会社のエリートトレーダーと道ばたのチンピラみたい人物を入れ替えて確かめようというわけです。主人公役はダン・エイクロイドとエディー・マーフィー、脇役にジェイミー・リー・カーティス。後者2人はこの映画でスターダムにのし上がったとのことですから出世作になったわけ。

先のタートル実験が始まったのは1983年。「大逆転」の上映も1983年。上映前の制作期間を考えると、映画の方が早かったという方が妥当だろうし、さらに遡れば、映画「大逆転」もマーク・トーウィンの「100万ポンド銀行券」という小説がネタ元だという話もあります。

問題の映画では「トレードの成否は血筋ではない」ということが判明し、主人公らは弄んだお金持ちに痛いしっぺ返しを食らわせ、ハッピーエンド。でも、これはフィクションの世界。

タートルの実験内容はどうだったのか? デニスさんらが教授したトレード方法とは具体的に何だったのか? そもそも実験は成功だったのか否か? 小説や映画ではなく、実世界ではどうだったのか。そこが問題です。

このことに関し、当初除籍になった人物が高額な解説本を売り出していましたが、脱落者が語る芸の神髄なんて、価値があるとは思えません。また、トレードを理解していないような作家が書いたタートル本も数年前に出版されていましたが、研修生のゴシップめいた内容にページが割かれ、もうひとつという有様。

ところが、20数年を経て、そのタートル集団のトップトレーダーだったカーティス・フェイスさんが本を出したことで、その話の全貌がほぼ明らかになりました。これが先の「結果偏向」で紹介した本。とくに興味深いのは、成功の秘訣とはトレードの売り買い方法というよりも、実はメンタルなコントロールだったという説明に、私は意を強くしました。

次回はタートル研修生の成功と失敗を隔てた理由について考えてみましょう。