能登 ふらっと 昔さんなみ

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昔訪れた宿に7月終わりに再訪。場所は能登で名前は「ふらっと」。以前の「さんなみ」は魚醬料理で有名で、小泉武夫氏(東京農大)が発酵料理の宿として全国に紹介したり、漫画「美味しんぼ」でも登場したことがある処。その宿が代替わりして娘さん夫婦が受け継ぎました。さて今回は?

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能登は滋賀から遠い。旅行評論家の井門さんが昔、「さんなみ」や「坂本」は東京から能登空港まで1時間+車で30分と紹介していましたが、関西からは空路もなくホンマに遠い。電車で輪島へ行こうとすると七尾や穴水まで。そこからバスを使うか、あるいは金沢からバスにするか、どちらにしても滋賀県大津から7時間近くかかります。車で行くにしても5時間。そんな遠い場所でも、こちら能登には今回で3回目。能登にしかない景色や食事の魅力があるから。

「さんなみ」といえば、13年前に本サイトで気に入った露天風呂を紹介した時に最初に取り上げた処。七尾湾を望む自然の中でウグイスの鳴き声を聞きながらゆっくり湯に浸かる贅沢な愉しみが特筆ものでした。「ふらっと」が受け継いだその露天風呂はメンテも行き届き、ゆったりと愉しむことができました(ただし、温泉ではありません)。

加えて、代替わりした時に宿をリフォームし、4部屋それぞれに内風呂を配したことで快適度アップ。これで民宿という名前のままなのが不思議なくらいの設えです。値段もリーズナブルなのが嬉しいところですが、何せ遠い(苦笑)。

「ふらっと」の由来は主人(オーストラリア人)のお名前からで、お料理も伝統的ないしり料理からイタリアンに変更。先代の「さんなみ」については「料理については、たしかに美味だし珍しく感じますが、宿代が安いこともあり凝った調理のものが供されるわけではありませんので念のため。」とコメントしていましたが、今回の能登イタリアンは大満足なお料理でした。

七尾湾を望む漁港近くにあるため、鮮度の良いお魚を使い、お野菜も地産地消。お肉 Meet は原則出していないとのことでした。使う調味料は先代と同じく、この宿自慢のイカの内臓を発酵させた魚醬のいしり。加えて地産の唐辛子と柚子で作った極辛の「ゆうなんば」などもあり。いしりや発酵食品を効果的に使った能登イタリアンはここでしか食べられないお料理になっています。お酒やワインも面白いものがいろいろで楽しめます。

花びら模様のハチメ薄切り、雌しべ位置に少量のいしり。周りの小さなコンカイワシ(米糠イワシ)が味付け調整役。

聞けばここもコロナ禍でお客が減って一時期は大変な状況だったとのこと。でも、ここの女将さん(さんなみの娘さん)は近くの古民家を借り上げてゲストハウスにしたり、近隣のお店との協力を深めたり、泊まる人が連泊できるような工夫を考えたりして元気いっぱい。こういう前向きな姿勢が時代を切り開いていくんだろうなぁとこちらも明るい気持ちになりました。

美味しいもの好きでお風呂好きなら満足感は半端なし。能登は遠いけど、是非一度訪れてみると面白いかも。