共生者 

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共生者 株式市場の黒幕とヤクザマネー著者:松本弘樹 (宝島社 2008)

最近の暴力団、覚醒剤や賭博で得た金を使ってベンチャー企業や新興市場へ投資して莫大な利益をあげているといわれ、こういった連中の資金獲得に協力する証券ディーラーやブローカーがいることが指摘されています。彼らを「共生者」と呼びます。

この本では、証券業界と闇社会との融合とでもいうべき実態を、ファイナンスの現場にいる著者が自ら関わった案件を引き合いにしながら明らかにしています。新聞やTVで一見偉そうな顔をして登場する人物が実はウラで汚い手口を使っていることも示しています。だから、メディアはこの本を大々的に紹介したくないでしょう。

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共生者の手口とはいったいどんなものか?
本で紹介しているのはまず、ヤクザマネーが入り込んだ仕手戦。そしてベンチャー企業の経歴ロンダリング。それに投資組合を利用した方法などエトセトラエトセトラ。とくに、ストックオプション制度を巧みに利用し、1円も使わず会社を創業する下りを読むと唖然。悪徳錬金術にヤクザなどがすり寄るはず。

一方、経済ヤクザの肩を持つ意見を時々聞いたり読んだりすることがあります。いくら資金源がヤクやトバクであっても、株取引で利益を上げること自体は合法的だとか、そういう行為自体は何ら違法でもないというわけでしょうが、ホンマかいなって思いません?。ヤクザはヤクザ、株取引自体もオドシにスカシ、インチキにマヤカシ何でもあり。そんなものがマトモな取引であるはずないじゃないですか。

この本が爆弾なのは、単なるヤクザマネーの告発ではなく、そういうおぞましい行為にTVや新聞に登場するような連中が多く関わっていることを書き連ねている点。会社名もキムラタン、シルバー精工、ブランディング、クオンツ、NOVA、宝林(現在のサハ・ダイヤモンド)、ジャックHD、光通信、ドン・キホーテ、アーバンコーポ(つい最近破綻)、フルキャスト、パソナグループ等々で、実例つきなのですから信憑性ありで納得です。

著者が関わったソフトバンクの内情やSBI社長の過去については、そこまで書いて大丈夫なのかな、と心配させる位です。そして、企業家とヤクザは見事に共生しているという実例紹介の下りには日本社会の闇の深さを感じざるを得ません。

こんな共生関係が蔓延っているようでは、日本の証券市場は簡単に改善されそうにありません。そんな国の通貨がどんどん高くなるなんて、世界はもっともっと酷い状態だというのでしょうか?