いちご白書

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昔バンバンで流行った「いちど白書をもう一度」。作者のユーミンが歌うのを聴くと、アレンジが今風になってなかなか。そ〜いえば、拙宅に、その原典の「いちご白書」のVTRがあったなとゴソゴソするとたしかにありました。今回はその話。

P.セント・メリーの「サークルゲーム」で始まるこの映画、途中途中で当時の名曲、たとえば、ニール・ヤングの「ヘルプレス」とかが填め込まれていて、それだけでも十分楽しめます。肝心のストーリー、主人公のコロンビア大学での実体験に基づき原作が作られ、そして映画も作られています。

1970年の映画ですから、時代背景は説明するまでもありません。日本でも東大の時計台立てこもりなどがあった、あの学園紛争の時代。米国ではベトナム戦争反対とか黒人差別反対などを掲げ、学生も激しく戦っていました。フラワーチルドレンとかウッドストックの時代といえば、通りがいいのでしょうか(ダメ?)。

いちご白書 (角川文庫)私自身は75年の大学入学なので「遅れてきた青年」でしたが、当時まだバリケードで正門封鎖とか、竹本処分反対などで騒々しい雰囲気があり、69年70年の余韻がまだ残っていました。今の人には想像するのも難しいでしょうけど、そういう時代はあったんです。大学の自治を守るというのはいまだによ〜わからんのですけど、自己の考えを主張することの大切さとか、世の中と自分との距離をたしかめたいという思いがあったのは鮮明に記憶に残っています。

さて、この映画、どちらかといえば単調な学生生活の描写が続き、娯楽映画というよりドキュメンタリータッチ。映像も今観ると古くささが匂います。でも、最後のクライマックスは圧巻。大学に立てこもった学生にしびれを切らした大学当局の命を受け、州兵が催涙銃等で武装して突入。無慈悲にも学生を警棒で打ちのめしながら排除するのですが、それが淡々と描写されていて、映画なのか現実なんかわからなくなるほど。ラストは主人公が最後のあがきを見せるところで映像がストップし、ジ・エンド。

主人公である作者はその後弁護士になったと原作本の後書きだったか、どこか別の雑誌かで読みました。一方、京大の時計台に竹本処分粉砕とペンキで描いて捕まった山岳部の学生もその後弁護士になり、社会問題に鋭意取り組んでいることを何かの折にご本人から伺ったことがあります。それを思うと、この映画の主人公はどうなのか?90年のイラク戦争やガセ証拠で突っ込んでいった今世紀のアフガン・イラク戦争に対し、主人公の彼はどう向かい合ったのか是非知りたいところです。

ところで、原作本の中で出てくる台詞に未だに忘れられないのがあります。

 「ぼくらは今まで戦ってきたし、今も戦っている。だから明日も戦っているだろう」

弁証法でもないし論理的でもない。まるでニュートンの慣性の法則みたいですが、なんか清々しい。最初に読んだのはまだ大学生で血気盛んな頃だったんでしょうけど、えらく格好いいセリフに聞こえたものでした。あれから30年。少しはこちらも成長したのかしらんと思うこの頃です。