20年後

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20年後はどうなっているのか。コロナ禍の現在、来月のことだってはっきりしないし、数か月数年先のことを考える人はそれなりにいても20年先となると実感がわかず、考えただけでオシマイという場合が多いのでは・・・。ここで紹介する成毛眞さんの本は、その20年後を描くことによって読者にどうしたらいいのかを提案しています。

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新型コロナ禍に対し、この国の政府や行政機関がいかに体たらくか、ご存じの通り。世界有数の医療サービスを誇っていたはずの医師会は医療危機を訴えて国民に自制を要求する一方で、自分らの病院は感染者から逃げたり、あるいは集会宴会に勤しんでいたことが暴露され、国民の信頼を一気に失ってしまいました。百貨店や飲食業界が独自に生き残る道を探し始めているのは国も専門家も信用できないという態度の表明でしょう。(ワクチン接種をめぐる喧噪については後日)

そんな日本ですが、今から20年後はどうなっているのか、それが今回紹介する本の内容です。20年先といっても20年前に現在を予想できたでしょうか。そうです、昔からそうだったように未来の予想も困難です。でも何も考えていないと『衰退途上国』の日本では生き残れないという認識は、私も著者と同じです。

幸い、わからないながら確かなこともいくつか。今あなたが40歳なら20年後は60歳、60歳なら80歳と(死なない限り)みな年を重ねます。今の出産死亡状況が大きく変化しなければ20年先の人口構成もだいたい把握可能。その結果、人口に関係することで何が起こるのかはある程度予想がつきます。

たとえば、年金制度の劣化。高齢者人口が増えるわけですから、制度がなくらないのなら年金額が少なくなるか、あるいは若年層の年金支払い額が増えるか、あるいは国庫補助の見直ししかありません。どれも問題ありで、簡単に解決策はありませんが、20年後にその劣化の影響を受ける人たち、つまり今の40代以下の人にその準備や覚悟はあるのでしょうか。

そんなことを日常的に考える者にとって、成毛さんの本は非常に興味深く読み進めることができました。この本では、テクノロジー、経済、衣食住、そして天災に章分けし、来る未来を予測していきます。いろんな人の予想の寄せ集め的な感じもありますが、成毛さん解釈でまとめて眺めるのは有用でした。


私思うに、この本の一番の売りは最後の最後の、「じゃどうしたらいいのか」という箇所。煎じ詰めれば、「てんでんこ」。社会を良くしようとか、政治を変えようとか、そんな大それたを考えるのではなく、Ⅰ人Ⅰ人が各自生き残ることを考えよということ。今のコロナ禍に対するこの国の劣化を踏まえるなら、この提言の含蓄は腑に落ちます。私自身にとっても改めていろいろ考えること多々でした。