家づくり実践記(8); 脱塩ビをめざして

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/04月号所収)

私たちの身の回りには塩化ビニル樹脂の製品が氾濫しています。台所で使うラップや各種器具部品、雨樋や壁紙・シート、難燃性カーテン、一部のオモチャや文房具、食べ物容器、それに壁や天井内の電線ケーブル、床下の水道管、排水管もだいたい塩ビ。塩ビや塩化ビニリデンのラップはポリエチレンラップに、塩ビ製のオモチャは非塩ビのものに切り替えればオシマイですが、なかなか簡単には代替できないものが多いのも実状です。今回は家づくり全体で塩ビ製品をどこまで排除できるか、考えてみましょう。

まず、 前回(7)では水道給水管を非塩ビにすることで、赤水対策、塩ビからの有害物質の溶出による水道水の汚染それに廃棄時のダイオキシン問題から逃れられることを説明 しました。
塩ビ製の壁紙はどうでしょうか。塩ビモノマー自体の有害性もさることながら、素材を柔らかくするために入れている可塑剤(フタル酸エステル等)、劣化を防ぐために入れる安定剤(カドミウム等の重金属)による危険性も無視できません。また、塩ビ壁紙は室内の湿気を調整することができないため、強制的な換気方法を行わないと家の「持ち」が悪くなってしまいます。つまり、健康上の観点だけでなく家の耐久性という面からも塩ビ製の壁紙には問題が多いのです。拙宅では全く採用しておりません。
次に電線ケーブル。室内にはりめぐらされている電線、電気器具をコンセントに繋ぐケーブル、どれも塩ビのシース(被覆)です。さらにいえば、コンセント内側に埋め込んでいるスイッチボックスや電線の中継ボックスもほとんどが塩ビ製です。面倒なことに、電線の難燃性を高めるために鉛等の重金属も入れているというからビックリ。
安心して下さい。昨今のダイオキシン問題もあってか、去年あたりから日本でも非塩ビの電線が販売され出しています。古河電工の「エコエース」、矢崎総業の「エコロジーソフト電力ケーブル」等がそうで、住友電工、三菱電線、富士電線などでも同様な製品を出しています。ところが、どの製造会社も塩ビケーブルを売っているせいか非塩ビケーブルを大々的に宣伝しておらず、製品の存在すら知らない人が多いのではないでしょうか。拙宅ではこの非塩ビケーブルを使うことにし、関連製品も電気工事業者の力を借りて可能な限り非塩ビのものを物色しています。

ところで、私の家の設計でどうしても排除できなかった塩ビ製品が2つあります。ひとつは排水管。管の強度や劣化を考慮するとセメント管や鉄管ではちょっと耐久性がありません。また、きちんと勾配をとらないと水が排水できないため硬質塩ビ管を使わざるを得ませんでした。2つ目は雨樋。鉄に塩ビ被覆をしたものが一般的なので、銅やステンレス製のもので見積をとってみたところ、拙宅では塩ビ&鉄の樋の約3倍、百万円前後の金額にもなり、全体予算の中で調整がつきませんでした。残念。今後の課題として低価格化をめざした関連企業の努力に期待したいものです。

脱塩ビの家づくり、言葉はなかなか勇ましいけど実行するのは大変。できるところから少しづつ、じっくり取り組んでいきたいものです。