死ぬな

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ちょっと驚かされるような、でもストレートなタイトルに惹かれ、並木秀之さんの『死ぬな 生きていれば何とかなる』(新潮新書)を昨年末読みました。いつ死んでもおかしくないと医者に宣言された、生まれつきの深刻な障害を持つ著者が想像を絶するような経験を重ねながら、百社以上の破綻処理に取り組んだというのです。・・・って、言葉で書けば簡単ですが内容はホンマに言葉を失います。人生とは何か、お金と幸福はどう考えたらいいのか等々、改めて考えさせられる内容がいっぱいです。

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死ぬな: 生きていれば何とかなる (新潮新書 587)まず、死ぬなという本のタイトルがストレート。私らが云ったら普通のアドヴァイスですが、著者から発せられると重く感慨深いものがあります。というのも、著者はちょっと想像を超えるような障害とともに生まれてきたから。

並木さんは先天性脊髄分裂症を持って生まれてきました。脊髄のお尻に一番近い仙髄が4つに割れていて中枢神経の機能が部分的に損なわれているとのこと。そのため、内反足で足の形が変になっており、著者曰く宇宙人みたいな恰好らしい。おまけに下半身の感覚が鈍く排泄コントロールができないため、腎臓にカテーテルを入れて直接体外に出すためオシメが欠かせない状態となっています。

出産に立ち会った医師は著者はすぐに死ぬだろうと考え、「名前を付ける必要なし」と言っていたそうな。一歳になると来年までは無理だろうと言われ、三歳になると小学校には上がれないだろう、小学校に入ると中学校は無理、中学生になるとさすがに高校生にはなれないと周りに囁かれていたというのです。さらに成人してから35歳以降に5回のがんを経験したとの下りにも唖然としてしまいます。でも、彼はしっかり生き残り、普通の人ならなかなか達成できない業績を上げていくのです。


著者がなぜビジネスで成功したのか、また会社を興したのか。それは本を読んでのお楽しみ。「世間の常識にとらわれない」、「コンプレックスが生きる足場を築く」、「ただ生きていければいい」、あるいは「メンツは捨てるためにある」等々という章タイトルを読むだけでもこの本の面白さが伝わるのではないでしょうか。

一つだけ紹介しておくと、彼の破綻処理テクニックが凄まじい。「借金で首が回らない。もう死ぬしかない」と吐露する経営者に対し、ご自身のおなか、つまり腎臓からダイレクトに管出ししているおなかを見せ、「こんな体でも生きているんだから、あなたもがんばってみろ」と伝えるらしい。すると、死ぬしか選択肢がないと思っていた人でも自分の方がまだマシ、生きることを考えてみようと思うらしい。著者だけができる必殺技ですが、要するに、本のタイトルである「死ぬな」という自分自身への「生きろ」というエールでもあるのです。

著者の並木さんは1953年生まれだから現在63歳か64歳。この本は著者の初めての本とのこと。生きているのが不思議なくらいの人生を歩んできた重みが端々に滲むような、そして大事な人生訓で満載な本です。この本に出逢った幸運に私は感激。ちょ〜お薦め。