アリス @青山バロックザール

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アリス=沙良・オットさんのピアノを聴きに先月京都上桂の青山バロックザールへ。予想に違わず、いや予想以上の素晴らしさに大感激。記憶に残る演奏会でした。オーディオ機器を通して聴くよりもライブ演奏の方がずっとずっとず〜〜〜っといい(笑)と実感した次第です。

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ワンダーランド200席の会場は満席。いつも青山音楽記念館では女性の方が多いのに今日は男性の割合が多いと連れ合いの弁。若くて綺麗なピアニストの演奏だからなのか、たしかに若い男性客が多いようです。

開演17時。演目はグリーグの抒情小曲やリストのソナタ ロ短調などです。なぜグリーグかというと、彼女が今年発表した最新アルバム「ワンダーランド」で取り上げたのがノルウェーのグリーグだから。でもアリスさんのワンダーランドって、不思議の国のアリスって洒落ですな。

最初にオットさん、演奏前にお話することは殆どないのですが・・・と断った上で、当日が熊本から始まった一連の日本リサイタルの最終日であること、今晩羽田からミュンヘンへ戻ることを伝えながら、演奏については妖精が森で戯れる様などを楽しんで下さい、等とのこと(日本語)。そしておもむろに弾き始めました。

門外漢の私が語るのも何ですが、演奏はとにかく素晴らしかった。ここが日本であることも忘れる程の演奏に、マゼールなどが彼女を引っ張りたがるのも宜なるかなと思ってしまいます(日本デビューは中村紘子さんの招き)。

ある時は優しく、ある時はリズミカル、場合によっては激しいタッチで演奏が進みます。ピアノがまるで弦楽器や管楽器あるいは打楽器のようにも聞こえてくるから、あら不思議。とくに打楽器モードでは音の大きさだけでなく、ホンマにドラムを叩いているのではないか!というような印象です。そうやって弾き方を大きく変化させるのが彼女の持ち味なのかもしれません。それにしても、アンコールの「魔王の宮殿・・・」はホンマに凄まじくも攻撃的な演奏でした(◎)。


ところで彼女の前振りのせいかでしょうか、目を閉じて聴いているとドイツやオーストリアの深い森や静かな湖の景色が目の前に現れるかのようです。そこでハタと思うのは、ヨーロッパの森の深さを知っているかどうかで演奏者の情感の盛り込みも違うんじゃないかということ。ちなみに彼女が学んだのはザルツブルグのモーツァルテウム。情感を磨くには最適な環境ですね。

演奏後、彼女のCDを2枚購入。自宅で聴くと生演奏とは別人みたいに、おとなしい。完成度はCDの方が良いのかも知れませんが、ライブの方がずっとずっとず〜〜〜っと良かったので「行けてラッキーだった」と実感した次第。

連れ合いがもらったアリスさん直筆のサイン

連れ合いがもらったアリスさん直筆のサイン

おまけ1:
演奏後のサイン会で「次はフランクフルトの演奏会へ行きます!」と彼女に伝えていた若い男性ファンあり。いいなぁ、そういうのめり込み。世界を股にかける追っかけに若さと微笑ましさを感じます。

おまけ2:
実は拙宅のCDプレーヤーがダメになったのは彼女のCDを聴いている最中でした。そこで、先にも書いたようにオーディオ機器の見直しに入ったのですが、お金をかけてもライブ演奏には勝てるわけありません。スピーカーやアンプの物理特性や限界を考えれば明らか。オーディオ機器にお金をかけるよりも、素晴らしい演奏者の生演奏を楽しんだ方がよっぽど意味のあることではないかと思う次第です。オットさんの演奏を聴いて尚更そう思います。