聖人ヴィンセント

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先日、映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」に触れました。ボブ・ディランの歌が出てくるやつです。
先週ツタヤに出かけるとレンタルが出ていたので早速鑑賞。個人的には好みな映画です。

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この映画、ドンパチや派手なアクションもなければサスペンスもなし。時代は現代、とある米国の住宅地に隣り合う2軒の家族とそれを取り巻く人たちの物語。アルツに離婚、シングルマザー、こどものイジメその他いろんな話題が盛り込まれています。俳優はビル・マーレイにナオミ・ワッツ、そしてメリッサ・マッカーシーなど芸達者な人たちだし、脚本がよく練られていてハートウォーミング。

なかなかと思ったのは台詞の1つ1つが工夫されていること。たとえば、主人公が隣人に「あんたはオレの何がわかっているんだ?」と問い返すんですが、映画の最後でその答がしっかりわかるようにシナリオがサンドイッチになっているところが脚本の妙技というところ。

肝心の映画は主人公やその周囲の人たちが抱える問題に触れながら、人間関係の機微に迫っていきます。それらすべてがクライマックスに繋がっていくところが素晴らしい。観ている者は途中でだいたいのところを掴めるのですが、最後で盛り上げるところはお約束通りの展開。

ところで日本での映画名は「ヴィンセントが教えてくれたこと」ですが、原題は、St. Vincent、つまり聖人ヴィンセント。この意味は映画の後半でわかります。ただ、彼のような競馬好きで「夜の女」を買うような人物が聖人かどうかは意見が分かれるところでしょうから、タイトルは大いに皮肉込みということかもしれません。

俳優のビル・マーレイが素晴らしい。おちゃらけな「ゴーストバスターズ」(1984)の時には想像ができませんでしたが、実にイイ味を出しています。彼が音楽に合わせて体を揺らす箇所が何度も出てきますが、映画の主人公の性格を的確に示していて最高。あれも演出なんでしょうね、きっと。

この映画、地味なストーリーですがなかなか滋味。まぁ万人向きじゃないかもしれませんが、私はお薦め。あ、そうそう、例のボブ・ディランの歌は最後まで観ないと出てきません。ご注意あれ。

ヴィンセントが教えてくれたこと [DVD]