消費税35%?

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tuhanseikatu1501数日前に届いた「通販生活」(2015 春号)の巻頭特集は題して、「日本の借金を考える。」。落合恵子さんと小林慶一郎氏(慶大教授)の対談です。

読んで、その内容にがっかり。ハイパーインフレを防ぐには消費税35%の選択しかないというような小林発言にはキナ臭いものを感じてしまいました。危機感を煽って増税になだれ込む言い分は、いったい誰にとって利があるのでしょうか。

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通販生活という雑誌は通信販売のセレクトショップ。デロンギやミーレ、その他世界の優秀な品物を日本に紹介し、購入できる窓口になっています。また一方で、地球温暖化反対や脱原発をも売りにして、エコ派のお客さんを惹きつけてきました。

でも、チェルノブイリの甲状腺がんのことを話題にし、支援活動まで行ってきた雑誌なのに、3.11が起きた後はもう1つ。この雑誌の中で日本の福島はチェルノブイリよりも何故か遠く感じられます。また、被爆を強制する側の代理人の、あの山下俊一氏を擁護する記事を載せた時にはびっくり。商売としてのスタンスなのか、それとも複雑な背後関係があるのか、脱原発という割には立場性がきわめて曖昧です。

その通販生活が描き出す、日本国債問題。内容はどうなのか。残念ながら、対談はハイパーインフレがいやなら増税、それも消費税35%しかないということを庶民に提示し、説得するかのような内容になっています。これじゃ、望む望まずに関わらず、危機感煽って増税したい派の広告です(怒)。

日本は借金超大国、いずれ日本国債の買い手はいなくなり、ハイパーインフレがやってくる…、そういう情勢分析についてはその通り。

小林氏曰く、現在の通貨流通量は約100兆円、日銀が発行済みの1000兆円分を買い取るような事態になれば(注)、その10倍。インフレ率は1000%で物価は10倍になります、とのこと(10倍とはいかなくても数倍はありそうな感じ:私見)。

(注)そうしないと金融機関や年金・保険機関が破綻するから。既に説明した通りです。

tuhanseikatu1501bそれに対抗するには、消費税35%か、同等の財政改善が必要だとする小林氏。落合さんは「無駄の削減や低所得者層対策を前提にしたうえでの消費税アップなら仕方ないような気がしてきた」と積極的な同意ではなかったため、小林氏は、「(そんなことをしていたら財政破綻するから)無駄の削減と増税論議は、今すぐにでも同時に始めるべき」と切り返しています。

責任論やまっとうな対応策は痛みを伴うから、とりあえず増税しようという、このロジックは支配層の常套手段。誰が一番得するかといえば、メチャクチャな国家運営から莫大なお金を引き出してきた官僚や利権関係者たち。危機対応で焼け太りというのも3.11で経験した通り。庶民を守るのは国だから必要なお金は庶民から奪い取れ、という古今東西な支配者の伝統の繰り返しがここにも見えてきます。

対談の小林氏の出自は東大から通産省(今の経産省)、キヤノングローバル戦略研究所から慶大という経歴。国寄り・企業寄りの発言をする彼の頭の中にあるのは、庶民の暮らしの行く末ではなさそうです。

小林発言でもわかるように、国が危うくなるという認識は学者も当局も私たちも(つまり、ここを読んでいる読者の皆様も含め)いっしょ。このことは共通認識としていいでしょう。

経済成長なきハイパーインフレはとっても悲惨です。ここも共通認識なんでしょうが、そこからが違います。第一、増税を受け入れるか否かというような二者択一だけでは自由度なし。じゃ、私たち1人1人はどうしたらいいのか、どうすれば来たるべき大津波に対抗できるのか、どういう手段でどうすれば被害を少なくできるのか、そこが問題なのです。

預貯金をたっぷり貯め込んで老後に備えているつもりの中高年層は一気に困窮状態に陥るでしょう。一方で、高額な借金・ローンを抱え込んだ者はインフレで借金がタダ同然になると考えるかもしれませんが、それは時間軸の評価次第。時間経過の中でどれだけ耐えられるのか、それとも無理なのか(これは逢沢本でも指摘されていました)。

もう一度、先の敗戦や3.11を思い起こしておきましょう。国は国体の生き残りのためには平気で庶民を犠牲にします。国に追随するNHKなどの大メディアも全く信用なりません。

ハイパーインフレでにっちもさっちもいかなくなってから対処しようとしても袋小路です。アベノミクスでハイパーインフレの危険性が高まってきた現在、あなた自身の生活や資産を守るためにはどうしたらいいのか。次は実物資産の確保という観点で考えてみましょう。(予定は未定)