10年国債の利率が0.3%を割ってしまいました。史上初の金利水準です。金がジャブジャブ市井に溢れている証拠。円安も一段落したような感じ。この停滞が続くなら、安倍政権はまたバズーカ打ちを命じるかも。

さて、先の逢沢本で挙げられていた個人の資産防衛方法の中に海外口座というのがありました。この件、少し考えてみましょう。（左図は国際投信投資顧問のサイトより）

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非常時、たとえば国債の発行が適わず国家破綻の憂き目になるようなケースでは日本の預貯金は悲惨な運命に陥ります。なぜなら、国際的な信用が消失し一気に円安になるからです。トイレットペーパーの不足なら可愛いものですが、輸入に頼る食料やエネルギーの価格は暴騰します。また、IMFが乗り込んでくるという事態も起こるでしょう。そうなれば、年金や社会保障は削減され、預貯金の引出額も制限されるはず（最近だったらギリシアをみればよい）。

同じように国家破綻をきたした日本の敗戦後、新円発行によって、戦時国債どころか旧円の価値が消え失せました。その際、隠匿した旧円は一切認めず、簡単に換金できないように国はお金の引き出しを制限したのです。おそらく次回もそのくらい国はやります（と考えるのが普通）。

それなら国の影響力が及ばない海外にお金を移しておけばいい、そんなことを考える人がいても不思議ではありません。実際、お金持ちたちがお金を隠し持って香港などへ口座を作りに行くという話は数年来ありますが、それで事態に対処可能なのでしょうか。

まず、海外口座は相手国の政情や日本との関係に大きく影響を受けます。相手国の政権が変わって国交断絶という事態になったり、あるいは日本との間に厄介な揉め事でも起きたら、預金閉鎖や剥奪ということだって起こらないとは云えません。あなたはこれを受け入れることができますか？　

（私は十分あり得ると思うけど）仮にそういうことがないとしても、日本国は抜け目なく、海外口座への対抗策を着々と打ってきました。

１つは海外資産5000万円以上を持つ者への締め付け。対象者は所轄の税務署へ財産内容を申告しなければならず（国外財産報告制度 2013年〜)、それを怠った場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。当局に黙って隠し口座を作ってもバレないと考えている人は多いようですが、バレたら税務署と一体化したメディアの集中砲火で一貫の終わり。そんなリスクを抱えるよりも別の方策を探した方が健全です。

もう１つは出国税。海外へ資産を移すだけでなく非居住者になって国内なら支払うべき高額な相続税などを逃れる者が少なからず出てきました。これに対抗し、財産を国外へ持ち出す時に税金を取っておこうという制度です。国はこの法制を急いでいるらしく、来年度には登場するみたい。当然、ある一定以上の大金を海外口座へ移す場合にも制約がかけられることでしょう。

>そして国民総背番号制。これが動き出せば国内・国外に関わらず資産は当局の網の目の中に入りますから、海外口座だから安心ということは全くなくなります。そして、その時期はもう来年に迫っています。

つまり、国による個人資産の包囲網はここ２、３年の間にほぼ完成しつつあるということ。海外口座を作ったら大丈夫というのは既に３年以上前のアイデアでしかありません。おまけに、見せしめで隠蔽口座には容赦なく対応してくるでしょう。

ちなみに、逢沢本では（政情変化などの）リスクを恐れないなら「非常に優れた選択肢」だと書いています。でも、国外口座の破綻リスクの方が国内リスクよりも大きくなりそうで本末転倒。おそらく、逢沢さん御本人が海外口座を運用していないから、真剣味のない書き方になったのだろうと推察する次第。（法人ならまだ方法あり、念のため）。

ということで、個人が海外口座を今から作ろうとしても、その手間やメンテを考えると、あまり価値があるようには思えません。既に作っている人の場合なら、非常時には国内には持ち込まず、資産を置いている国外で費消する方法を考えた方が無難かもしれません。私ならそうアドヴァイスします。

ほんじゃ超インフレに対してどうしたらいいのか。逢沢本では、預貯金を実物資産に替え、不動産は長期保有に徹し（借金・ローンは論外）、株は一時期の暴落に耐えろ、そうすればその後のインフレで暴騰する等々と紹介していますが、これらはすべて同意します。

何か特別の方策や奇抜な裏技を期待する向きには申し訳ありませんが、要するに、超インフレ対策をしっかりとっておけということ。これしかないのです。

蛇足ですが、国債破綻・国家破綻と私もよく書きますが、国家は破綻しません。破綻するのは国家ではなく国民。国家は国民を犠牲にして国体の延命を図るので、国家破綻とはその国民が艱難辛苦をなめるということなのです。為念。