立ち姿

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musashi昨日アップした坂本龍馬の写真について少し。
あの姿って直立じゃありません。長時間の露出に我慢するために少し姿勢を緩めていたのかどうか。ただ、あの姿を見たとき、別の立ち姿を私は思い出してしまいました。それは宮本武蔵。そちらは写真のない時代ですから、絵でしかありませんが、それでも似たような雰囲気を感じたのです。

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2つを並べてみましょう。左が龍馬、右が武蔵です。武蔵の絵は熊本の島田美術館所蔵のものです。

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一目瞭然、どちらも直立ではありません。龍馬は明らかに前屈みというか、少し腰を曲げています。一方の武蔵は龍馬ほど崩れてはいませんが、首を屈め、ほんのわずか腰をためた感じ。龍馬の方は写真撮りのために姿勢を緩め、寛いだ姿だったのもかもしれません。でも、武蔵の方は刀を構えており、立ち会い時の姿を絵にしたものだと考えられます。

どちらの姿も、背筋をピンと伸ばした外国のお金持ちの肖像画とは何か雰囲気が違います。背筋をしゃんとせよ、という世間一般のドウトク的な教えからすると龍馬も武蔵も落第でしょう〈苦笑)。

じゃ、なぜそんな姿勢なのか。

ある剣術研究者によると、この武蔵の姿勢こそ、彼の剣術の極意なんだそうな。直立は凛としているかもしれないが、タメがないので融通性が乏しい。少し前屈みで腰をためていることで、いつでも攻撃に移れるし、場合によっては逃げることも可能になるんだとか。攻撃防御の双方を煮詰めていくと、こういう姿勢が一番だということなのです。(その記載がある本が私の書庫にあるはずなんですが、整理の悪さゆえに今朝見つけられませんでした。出典出せずにご免なさい)

この話を知った時、こどもの頃なぜ龍馬や武蔵の立ち姿に惹かれたのか、謎が解けました。柔やかな姿勢こそ強いというのは、風にそよぐヨシや撓るタケに通じるものがあります。

直立不動はたしかに見栄えはいいし、格好も良い。でも、実利的な、いつでも危機・危険に対応できる武蔵や龍馬の姿勢の方に私は憧れてしまいます。昨日龍馬の写真をアップした後、改めてそのことを思い出した次第。