埼玉プール事故:過失責任で6人送検
2006/12/31
遅きに失した感もありますが、一応整理。2006年11月16日、埼玉県警捜査一課等は今回のプール事故について6人の関係者を業務上過失致死罪でさいたま地方検察庁に書類送検しました。入手した警察資料を元に少し考えてみましょう。…
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送検されたのは6名。ふじみ野市職員が3名と、プール管理を請け負っていた業者関係が3名。業者については丸投げ会社もあり、請け負っていたというのが正確かどうかは曖昧ですが、まぁそれは横に置きましょう。
まず行政側の3名について県警は、「吸引事故を防止すべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然と一般開放した過失」としています。業者ら防護柵を確認させ、安全確保措置をとるように指示すべきだったというわけです。
業者3名については元請けとマル受けの2社について、「…吸引事故を防止すべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然と遊泳客らに利用させ続けた過失」となっています。先の行政側過失と文言を比べてみて下さい。前書きは違えど「一般開放させた過失」と「利用させ続けた過失」の違いだけ。軽い過失にしか見えないのは私だけでしょうか?
また、1名の現場責任者についても奇妙な理由となっています。曰く、「柵がはずれていたのを確認した際、直ちに監視員らに遊泳客らを上がらせる等の措置をとらせた上、自らは起流ポンプの作動を停止させ、もって吸引事故を防止する注意義務があるのに、これを怠り、それらの措置をとらないまま遊泳客らに遊泳を続けさせた過失」となっています。現場への責任の押しつけは県警の書類送検でも行われたというべきでしょうか。
これでは「本当の犯人」を検挙したことにはなりません。女の子を吸い込み殺してしまった直接の原因はプール吸水口の蓋がはずれていたこと。それ以外の事実関係でこれより重いモノはありませんが、そのことに焦点を絞るならターゲットは別のはずだったのではないでしょうか。
はずれていたのを確認していなかったとか、はずれていたのに遊泳禁止にしなったから過失責任があるというのが今回の送検理由になっていますが、本当にそうでしょうか。私はそうは思いません。はずれるようなプールを作った責任はどこに消えたのでしょうか。簡単にはずれてしまう針金止めを行い、結局事故を起こした原因は誰が作ったのでしょうか。そのどちらにも埼玉県警は触れていません。なぜ? おまけにその真の関係者は合併前の大井町にいるはずですが、今回挙げられているのは合併前の上福岡市側の職員とか。奇妙ですね。
プールの安全性を確認しなかったことを送検理由にするのなら、埼玉県の保健所こそ最大の安全確認担当者ではなかったのか。いやそれよりも簡単にはずれてしまう蓋しかつけていなかった吸水口を有するプールを設計施工した会社の責任はどこにいったのか。私は今回の設計者や業者の名前を知っていますが、それら会社を含む関係業界は別の箇所でも同じようなコトをやっているのではないでしょうか。それらの責任を今回も免除し野放しにしたのだとしたら、次の被害は既に、そして確実に用意されているということになりません。まさに『あぶないプール』はまだある、と言わざるを得ないのです。
もうひとつ。業務上過失致死の場合、禁固刑5年以下もしくは…なので時効は5年。そうなると、今回の事件の場合、2001年7月31日以前の過失は問えません。これは非常に面倒です。というのも、肝心の針金止めの責任追及が曖昧になってしまうから。
2000年に問題のプール管理を受託していたサンファミリー社は問題の針金止めを指摘し、ボルトに取り替えたとの報道がありました。でも、その後いつの時点かでそれ以降の受託業者か役所関係者が針金止めに戻したため、今回の蓋はずれに繋がったとみるのが妥当です。でも、2000年時点の話は時効のかなた! これでは本当の犯人は野放しになってしまっていると見なければなりません。スネに傷のある関係者は正直に名乗り出るなり、自己告発して責任をまっとうしてほしい。そうでないと、被害者の魂は救われません。