家づくり実践記(7):非塩ビ給水管の勧め

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/03月号所収)

前回は水道の赤水や塩ビ等の危険性について説明しました 。新築の場合は水道配管の素材に塩ビやエポキシ、それに鉛などの有害物質を一切使わないように設計すればよいのですが、話はそう簡単ではありません。どんな管を使えばいいのか、その設計はどうするのか、業者は塩ビ管以外の工事ができるのか、従来の塩ビ管以外の管以外の管を水道当局が承認するのかしないの等といった問題があります。

まず、代替管の素材。水道給水管には塩ビ管、塩ビライニング鋼管や鉛管以外にステンレス管、ポリエチレン管、ポリブテン管、それに架橋ポリエチレン管等が日本工業規格J ISで認められています。鉛や塩ビ関係以外の管が皆無に近いほど使用されてこなかった理由は、水道当局が建築時の使用許可を与えてこなかったためです。ところが、ここ数年の 水道法の改正で性能基準を満たすものであれば申請するだけでよく、水道当局の許可はいらなくなりました 。危険な塩ビや鉛管に代わる候補としては、有害物質の漏出を心配する必要がまずない架橋ポリエチレン管(PE)かポリブテン管(PB)が選択肢になります。
次に設計施工方法。塩ビ管では一般に『分岐継ぎ手工法』と呼ばれるもので施工します。これは、水道本管から引き込んだ管を枝分かれさせ目的の蛇口まで繋ぐという方法。ところが、PE管やPB管では 『サヤ管ヘッダー工法』 も使えます。これはおおもとの所(ヘッダー)から各蛇口へ直接それぞれ1本の管で繋ぐという方法で、柔らかいPE管やPB管にサヤ管をかぶせます。管路途中に継ぎ手接合部がないため漏水の心配がなく、錆びる素材ではないため腐食の心配もありませんので、従来の塩ビ管の赤水問題とは無縁となります。
問題は施工業者と行政対応。ここ数年、マンション等ではPE管やPB管を採用した例もありますが、建築業者も水道工事業者も設計や工事経験が皆無に近いため、いったい何をどうしてどうやったらいいのかチンプンカンプン。実際のところ施工自体は難しくないのですが、施主も建築業者もいっしょになって勉強していこうという熱意がないと現段階では採用が難しいかもしれません。ちなみに、 昨今流行りの「健康住宅」でも、この安全な水道給水管について触れたものは私の知る限り皆無 でした。
さらに水道当局にも要注意。厚生省は水道法の改正を地方の水道事業体にはちゃんと説明を行っていないのか、地方では従来通り塩ビ関係の給水管でないと認めないということが起きています。塩ビ管以外の給水管の経験の欠如、慣習にこだわる役人体質(塩ビ業界との親密な関係もあるのかな)が、足を引っ張っているのかな。
改正法ではJ IS規格管を使えば申請だけで事足れりですから、許可する・しないということ自体、法律違反。拙宅の例でいえば、本管からの繋ぎ込みが鉛管だったためポリエチレン管に換えようとしたら、水道当局は硬質塩ビ管でないと認めないと工事業者に回答してきました。早速、私自身が行政担当者に電話をかけ、どうしてもこちらの申請を認めないのなら法的根拠を文書で出せと要求したら、すぐに撤回してきました。行政指導するなら、もっと法律を勉強してからにしてほしいもんです(苦笑)。
当分は不勉強な行政相手と丁々発止しなければならないのが面倒ですが、塩ビ製品の牙城の一つであった水道給水管を安全な給水管に見直すことは可能です。是非チャレンジして下さい。