老いる覚悟

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老いる覚悟 (ベスト新書)覚悟という字は「悟りを覚える」と書くんですね~。覚えると云ったって記憶するわけではなく、目覚める方の覚えるだろうけど、今までそんなこと考えたことなかった。森村さんの本を読むと、ポスト311の覚悟について考えるところ多々。

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森村誠一さんといえば、私の印象ではまず「野生の証明」。それに731部隊の残酷さに迫った「悪魔の飽食」が頭に浮かびます。今回のはそういう小説ではなく、ライフスタイルを追及したものですが、なかなか読み応えのあるものでした。

最初からグイグイ引き込まれます。311の地震津波のダブルパンチ。加えて原発事故。多くの人がすべてを失い、人権を蹂躙され、それでも明日に向かって生きていかなければならない…、どうしたらいいのか、何ができるのか。311だけじゃない、これから老人に優しくない状況を前に、いろいろな話題を提供しながら、それについて考えていこうということで、最後まで一気に読ませてしまいます。

311絡みで面白かったのは、災害直後に東京などでミネラルウォーターなどの物品が店頭から消えた件で、あれは「本当の欠乏ではない」と喝破している箇所。「パンの棚は空っぽでも、菓子コーナーには商品がいっぱい」なのは「戦後の何の物もない時代を経験した者にとってはすごいこと」だというわけです。なるほどなるほど。今回の歪な恐怖の一面を見事に捉えていますね。

ポスト311の老いを生きるために必要なのは「志」ではなく「覚悟」。森村さんはそう指摘しながら、「国や社会に頼らない自立して生涯現役で老いる九つの覚悟」を紹介していきます。年金や老化社会の問題は311以前からも存在していたのですが、311のおかげで余計に鮮明化した、と考える私にとっても森村さんの言い分はその通り!。そう頷けるものが満載で勉強になりました。

さてさて、悟りを覚えることは私にも可能なのかどうか。そこが問題です。