原発から20kmに近寄るな、妊婦・こども・年配者は30km圏内には住むな

.opinion 3.11

そう勧告するのは米国大使館。
でも、この勧告を日本のメディアはどう報じたか。それまで80km(50マイル)だったのを20kmに縮小したことをことさら強調しただけ。これがこの国の御用メディアのやり方。
米国政府の言い分を振り返りながら、30km圏内の学校再開などという暴挙に踏み切った日本の愚かさをみていきしょう。

・・・

アメリ合衆国の東京大使館のホームページに「トラベルアラート」(旅行者向けの警報)が載っています(10月7日付け)。

何が書いてあるかといいますと、まず、米国民に対し、現在の日本からのデータに基づいて原発から20km以内の地域は避けることを(avoid)勧告しています。また20km圏外でも、日本政府がいうところの「計画的避難区域」(飯舘村等)には立ち入らないように薦めています。

次に80km以内の地域につい2つに分類分けして言及しています。「一時的な訪問者」については、1年以内なら有意な(深刻な)被害はないだろうが、日本当局に相談せよと薦めています。80km圏内に1年以上住む「長期居住者」に対しては、より危険性が増すので地方当局に現在の被曝情報の提供や低減するための勧告を受けるように薦めています。

とくに、最後の一文は重要なので原文をここに載せておきます。

In addition, pregnant women, children, and the elderly should avoid residing within 30 km of the Fukushima Daiichi Nuclear Plant.

・・・妊婦、こども、年配者は福島原発から30km圏内には住んではいけません(住むのを避けるべきである)。

つまり、米国は東電福一原発の80km圏内から避難せよという当初の勧告を今回緩和しましたが、いまだに80km圏内が安全だと宣言しているわけではありません。とくに妊婦、こども、年配者という、被曝影響が大きい集団については30km圏内の居住は認めていません。ここは強調しても強調しすぎることはないはずです。

さて、この米国勧告を日本のメディアはどう報じたか。ざっと並べてみると次の通り。

  • 米 原発事故の避難勧告範囲縮小(NHK)
  • 米国人の避難範囲を半径20kmに縮小…米政府(読売新聞)
  • 【放射能漏れ】 米が避難勧告エリアを緩和 福島原発周辺(MSN産経)
  • 米、原発避難勧告を半径20キロ圏内に縮小 国務省発表(朝日新聞)
  • 半径20キロ圏内に縮小=米政府の退避勧告-原発事故(時事通信)
  • 米、福島原発事故の退避勧告緩和 20キロ圏内に(日経新聞)

どのメディアも口を揃えて、米国の避難勧告が20km以内に縮小されたことを強調するかのような見出しになっています。それまでの避難勧告が80km(50マイル)だったのが「緩和」されたというわけでしょうが、先に示したように、米国は手放しに安全宣言しているわけではありません。勧告のどの部分を強調しているのかで印象が随分変わってくるという実例です。

また、日本のメディア発表中にも妊婦こども年配者への配慮についても文言はあるのですが、ニュースを見聞きした人がはたしてそれをきちんと受け取ったかどうか。おそらく「緩和宣言」に気持ちが引き摺られてしまい聞き逃したり理解できなかったのではないかと懸念します。私自身、NHKの朝のニュースを聞きましたが、後半は妊婦云々の話は聞いた記憶がはっきりしません(聞き逃しなのでしょうか)。

日本では「居住可能」だと吹聴された地域が米国では違った評価になり、飯舘村等の汚染地域の取り扱いや妊婦・こども・年配者への対応が全く違っています。この違いに着目し、その理由を追及することこそがメディアの使命の1つだと思うのですが、御用メディアにはそんな志はないのでしょうか。

避難地域の縮小化で、多くの人たちが危険な地域での生活を余儀なくされてしまいました。それを望むのならそれもまた人生。でも、望まない者にとっては「地獄」です。なんとか、自主避難の権利が獲得できることを願って止みません。

ところで、この米国勧告、平易な英語なので福島県下の中学校や高校の英語の授業で使ってみてはどうでしょうか? そして、日本との避難勧告との相違を考えてみるというのはいかがですか。この世の中の真の姿(つまり、マヤカシゴマカシコワレモノ)を理解する、なかなか良い鏡になると思うんですがね~。