東京原発

.Books&DVD… 3.11

東京原発 [DVD]こんな面白い日本映画があるとは知りませんでした。2002年制作の映画。東京電力・福島第一原発事故の9年前の映画ということになります。でも、東京の映画館で一般公開されたのは2004年春。上映館がなかなか現れなかったのは、国や電力会社そしてそれの使い走りのようなメディアにとって「なかったことにしたい映画」だったからでしょう。

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素晴らしい映画なのに多くの人にその存在を知られていないとしたら、とてももったいない。電力会社を含む原発推進勢力の虎の尾を踏んだら、マスコミだって潰れるから取り上げてもらえない・・・これが、日本の現実。

映画は、カリスマ都知事が「東京に原発を作る!」と宣言する場面から始まります。「原発を作れば財政難が解消する」「地方に作って安全なものは、東京に作っても安全」「送電ロスがなくなるので、電気が大幅に安くなり経済が活性化する」「経済が活性化すれば雇用も改善する」「原発エネルギーの7割にあたる温排水を、東京なら海に捨てずに有効利用できる」など、様々な推進意見が登場します。

それに対し、そのような考えがいかに根拠の無いものなのか、推進側に操作されたものでしかないことも映画の中できちんと展開されていきます。ここがまた素晴らしい。とくに、原発がなくても電気には何ら困らないというのを出演者みんなで納得する下りは秀逸。脚本家・監督の腕が光ります。

映画の前半は、都庁の会議室でカリスマ都知事や都幹部達が議論する場面ですが、「そ~そ~、こんな人、こんな意見、よくあるよね~」という感じを、役所広司、平田満、段田安則、岸部一徳、田山涼成、など味のある役者達が醸し出していきます。

映画後半は、予期せぬ大問題が噴出して急展開するのですが、それは観た人のお楽しみ。そして、都知事の言い出した「東京に原発を作ろう」という意味が如何なる思惑であったのかというところも拍手。

ただ、映画に登場する燃料電池は、たしかに映画制作時期には実現可能と言われていたのですが、その後の原材料の高騰によってポシャってしまいました。このあたり、時代の移り変わりを感じてしまいます。でも、原発やエネルギー問題をめぐる大筋は充分に理解できる作りになっています。

東電福一原発「事件」が起こるべくして起きたことをこの映画も教えています。上映当時には荒唐無稽だと思った人でも、今これを観ればどう考えるでしょうか。311以前にはパロディみたいな映画でも、311以降となった今としては? 中途半端な原発入門書を読むくらいならこの映画の方を薦めたいくらい。

このDVDをツタヤでレンタルしようとしましたが、近くのお店には置いていませんでした。ネット貸し出しでもレンタルしにくい状況ですので(おそらくレンタル本数が極端に少ない)、結局購入。アマゾンなら新品でも3000円弱、充分に価値ある1本です。お勧め。