東電の大株主

.opinion 3.11

また原発事故を起こすと決めた」東京電力の株主総会。そこで浮かび上がってきたのが大株主の存在。その名前をみながら、日本の支配者の姿カタチが少し見えてくるような感じ…。

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ある会社を自分のものにしたいと思ったらどうするのが一番でしょうか? 株式会社なら株を握って経営権を奪うのが定石でしょう。じゃ東電は?

東電の大株主は上から順に、日本トラスティ・サービス信託銀行、第一生命保険相互会社、日本生命保険相互会社、日本マスタートラスト信託銀行、東京都、…… となっています。このうち、1位の日本トラスティと4位の日本マスタートラストは年金運用ファンドですから、運用がうまくいかないとなったら撤退するのもありそうです(注1)。でも問題は2位と3位で、(勝俣会長曰く)この2社が脱原発を求めた株主提案に反対した張本人らしい。要するに、第一生命と日本生命が東電の原発推進の後ろ盾というわけ。(注2)

なぜ生保が原発推進なのか? 義理? それとも何か思惑があるのでしょうか?

東電・関電どちらにも絡む日本生命をみてみましょう。相互会社ですから株主を洗い出すことはできませんが、日本生命がどんな会社の株を持っているのかはわかります。Wikipediaによると、「筆頭株主となっている企業は、三菱東京UFJ銀行、東洋紡績、帝人、クボタ、近畿日本鉄道、阪急電鉄、南海電気鉄道、京浜急行電鉄、京王帝都電鉄、サッポロビール、武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、田辺三菱製薬、高島屋」で、「放送局関連ではTBS、テレビ東京、毎日放送、朝日放送、テレビ大阪の主要株主になっている。非上場企業の主要株主企業にはサントリーなどがある」とのこと。大手繊維や鉄道、薬品会社等の筆頭株主で、ほとんどのメディアに幅を効かせているというわけです。

もともと滋賀銀行を作った近江商人の弘世家が鴻池11代目の善右衛門を社長に据えて創業。その鴻池家11代目は大阪で第13国立銀行を作っていますし、その銀行は他の銀行と合併し後に三和銀行になるわけですから、日本生命が現在のUFJグループというのは出自の経緯そのものでしょう。また、繊維関係会社や鉄道会社の大株主というのは明治維新からの歴史を引き摺っています。

もう説明するまでもないでしょう。銀行が資金源で、TV各社まで握っている日本生命。その会社が東電の大株主で原発推進とくれば、単なるお義理な関係でも何でもない。TVが御用メディア化しているのも宜なるかな。支配層がそうせよと命じれば、彼らはやらなきゃ立場がありません。

おまけに、生保は多くの国民から軍資金(保険の掛け金)を集め、それでお金儲けしながら、国民生活を規定していくのです。電気にしても、原発がないとやっていけないという脅しをかけながら。生保と原発推進との関係に私たちの思いが至らないという現実こそ、忍術隠れ蓑(近江商人って甲賀の流れか?)。支配者にとっては実に合理的。日本支配の構造の一端がそこに見えているというべきところです。

東電の株主総会で改めて醜悪な社会構造を見てしまった、そんな感じです。脱原発が単に技術の問題ではないことも知っておきませう。

(注1)東電を破綻処理するという話が本格化し、株主債権者は大損だという話になったら、きっと国民の年金財政に多大な影響が出るから困るなんてのが大手を振って出回るはずです。要注意。

(注2)関西電力の大株主は順に、大阪市、日本生命、日本トラスティ・サービス信託銀行、神戸市、日本マスタートラスト信託銀行…と続きます。