水道水源保護条例の有効性は?

Water

共同通信や中日新聞によると、12月24日最高裁第二小法廷は、「三重県紀伊長島町で産業廃棄物処理施設を計画した業者が、同町の水道水源保護条例に基づき計画 を禁止した町の処分の取り消しを求めた訴訟の上告審判決で町の処分は違法とし、差し戻し」を決めたとのこと。でも、水道水源保護条例の正当性を否定したものではありません。…


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問題の産廃施設は、「町の水道水源から約三キロ上流に、 廃タイヤなどを焼却する産廃処理施設」のことで、三重県が1995年5月、廃棄物処理法に 基づき設置を許可したものでした。産廃事業の認可は都道府県ですから、施設を設置される側の町は当事者ではなく、「関係機関」でしかなかったというのが大きな問題であることをまず触れておかねばなりません。そこで、町は水源保護条例でこの計画に対抗しようとしたわけです。

水道水源保護条例とは何か。水道水源の安全性を担保する法令がこの国にはないことから、地方自治体が水道法の第二条を根拠にして自ら、水源地域内の事業を規制しようとする条例のことです。1980年後半から問題になってきたゴルフ場開発や産業廃棄物処理場・処分場に対抗する手段として、三重県などをはじめ多くの自治体で制定され、環境破壊に繋がるような事業に対する歯止めとして活用されてきました。拙著「あぶない水道水」でも触れている通りです

とくに三重県では13市町村を越える自治体が水源保護条例を定めていますが(1997年時点)、紀伊長島町の条例もその流れを組むもの。新聞報道では、「 産廃施設の設置をめぐって自治体が独自に条例を制定して規制する動きが広がっているが、今回の 判決はこうした動きに影響を与えそうだ」(中日新聞12月24日)と、条例の有効性について懐疑的な観点を示していますが、はたしてそうでしょうか?

もともと一審二審では、「取水によって水源の水位を著 しく低下させる恐れがある」として町の禁止処分を適法と認め、業者側の訴えを退け…」(中日新聞)ていましたが、最高裁の滝井繁男裁判長は「業者と十分協議せずに決めた処分は違法」として、条例中の「協議」規定の違反を指摘し、差し戻しています。つまり、産廃計画に対する条例の有効性を問題にしたのではありません。

もし、今回の最高裁判決を正確に伝えるのであれば、

水源保護条例の施行に当たり、事前に十分協議することが如何なるものなのか。今後はその点が各自治体に問われるものとなるだろう

と書くべきところです(きっぱり)。