マンガで読む 有機野菜の食べ方100

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マンガで読む有機野菜の食べ方100
魚柄仁之助 著  野口弓子 マンガ  飛鳥新社 2004.03.18

衣食住の食に関する本で、面白いものを最近読みました。それがこの本です。

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私は食い意地が張っています。人生、食べるために生きているのではないかと思うこともしきり。いや、食べることと飲むことのために、と言い替えておくほうが正確かもしれません。何がエコロジーの話やねん?と突っ込み入れられそうですが、まぁ大所高所の話だけでなく、身の回りの衣食住を考えるのも大切だということなんです。

その食べたり飲んだりは一人よりも二人、あるいは気のおけない仲間たちといっしょに、というのがいい。そういう時の楽しみのために、日頃から食材や調理方法、お酒の蘊蓄を勉強しておくことは欠かせません。だからというわけでもありませんが、拙宅には料理やお酒の本がそれなりにあります。でも、この本は今まで読んだ本よりもいくつかの点で優れていました。

まず、マンガと組み合わせることでレシピや出来上がりに対する記憶が明快になっていること。次に、どこにでもある野菜と縦横無尽な発想の組み合わせでオイシイものができるあがることを示していること。また、料理本に漂う教科書的な雰囲気がほとんどないこと、等でしょうか。マンガを低級な文化だとバカにする人たちがいますが、それがとんでもない勘違いだということを、この本は示しているといえるかもしれません。

料理は楽しく作りたいもの。それなのに、何々を用意して、あれこれ手順を覚えて、調味料の分量までいちいち指定となると、創作の愉しさはごっそり削げ落とされてしまいます。でも、この本の雰囲気は違います。それは、著者の魚柄さんの人柄にもありそうですが、マンガのストーリーが実にいいのです。思わず感情移入してしまいそうな位です。そのストーリーはまぁ読んでいただくとして、肝心の料理の方はどうか。

出てくる素材はありふれたもので、ナス、ほうれん草、白菜、たけのこ、じゃがいも、かぼちゃ、トマト、その他野菜もろもろ。な〜〜んだと云わないで下さい。これらがこの本では実に美味しく大変身していくのです。

でてくるレシピは多彩で、それもすぐにチャレンジしようと思わせるようなものが満載です。私の場合、読んだ初日に「ごぼうの蒲焼き」なるものを作ってみましたが、なかなかオツでした。ごぼうをゆでてたたいて開いて甘醤油で炊くと、見た目はまるでウナギの蒲焼きですからね。ヘルシー感もあっていいのですな、これが。これらがマンガ仕立てで登場するので、簡単に頭の中に浸透していくのが、この本の最大の売りでしょう。そして、なんだかんだでマンガを読み進んでいくと、いつのまにかオイシイ料理の(気持ちの)勘所みたいなものが身につくような気がしてくるから不思議です。そういえば、クッキングパパという漫画がありますが(うえやまとち 週刊「モーニング」連載中)、あれもこの本と同じだなと今改めて気づきました。

つい先日、うちで考えたメニューに「キャベツのミルフィーユ」なるハイカラなものがあります。これはキャベツをまず軽く蒸し、一定のサイズに揃えて、豚肉と椎茸を間に挟んで重ねていき、数センチの厚みのものを再度蒸して出来上がりというもの。見栄えも味もなかなかのものだなと夫婦で自己満足していたら、その原型がこの本の中のメニューにあることに気づきました。要するに、自分で考えたつもりだったのが、ホンマは本の記憶が元になっていたのです。でも、まるごとまねるのではなく、そうやって自分でアレンジして発展できたことに愉しさを感じます。

この本には有機野菜とタイトルがついていますが、マンガの中ではあまり拘っていません。私はそれでいいと思います。有機・・・という言葉自体曖昧なものですし、飼料や肥料のことを言い出せば、どこまで本当に有機なのと云いたい位ですから。それよりも大事なことは、安全で安心して食べることのできる野菜とそれを作る農家や販売する業者をいかにして探すか、その背後にある農家の方々の苦労をどこまで消費者が(値段の問題を含めて)理解できるのか、そんな問題を考えておかないと、こういう本自体が成り立ちません。そのことはまたいずれ取り上げるつもりです。

難しいことはさておき、今から美味しくて栄養豊かな野菜が出てくる季節です。是非一度、この本を手にとってみて下さい。お薦めです。