泥棒国家の完成

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泥棒国家の完成ベンシャミン・フルフォード 著 光文社 2004.03.30

「日本がアルゼンチンタンゴを踊る日」、「ヤクザ・リセッション」に続く、B・フルフォードさんの三番目の本がこれ。すぐに読みました。

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エコロジーと経済や国家の話は関係ないじゃないかと訝しがる人がいたら困るので、最初にひと言。エコロジーのエコはエコノミー(経済)のエコと同じで、ラテン語のオイコス(家)がルーツです(玉野井芳郎「エコノミーとエコロジー」みすず書房 1978)。要するに根はいっしょ。

地球温暖化とか、食料危機とか、はたまた地球レベルでの有害物質規制とかを論じる時には純粋に科学的な話だけではなかなか先に進みません。というのも、何か対策をとろうとしたら、最後はお金が出せるかどうか、という話になってくるからです。そのためには最低限世の中のお金の動きと、その背後にある思惑の数々に注意を払っておくことは大切です。

水道水の安全性という話でいえば、水源水質の悪化による破綻よりも、財政的な破綻の方が先にやってくると私は推測しているので、こういった国家の仕組みとか醜い構造といった本は非常にためになります(こじつけではありませぬ)。

日本のことでいえば、90年初頭のバブル崩壊に続く「失われた10数年」は今後どうなるのか、そのことの理解と対処が私たちの未来のカタチを形成することは私が申すまでもありません。

ところが、巷では相変わらず楽観論が蔓延っています。少なくとも私にはそう見えます。いわば、いつまでもこんな不景気が続くことはないだろう、誰かが何かしてくれる、そのうち株も上がり景気もよくなり、また経済成長できるはず、この日本が沈没するはずがない…。本当でしょうか。私はもっと悲観的です。

なぜ80年代後半のバブルは起きたのか。なぜ14年経っても不況が解消されないのか。バブルの中心にいた連中ははたして誰だったのか、彼らの責任は本当に追及されたのか。公約違反の小泉政権が存続できるのはいったいなぜか。60年代の経済成長のようなものは今後あり得るのか…。

B・フルフォードさんは、これらの問いに彼の答を出しています。この本までの3部作の表紙に挙げられた決め文句を並べてみると、

・2002年4月20日、アルゼンチンはデフォールトした。バンク・ホリデーは実施され、外貨(ドル)預金は強制的にペソに換えられた。
・構造改革はかけ声だけ、株価は下げ止まらず、失業者は街にあふれている。すでに、日本はアルゼンチン状態にある。
・ヤクザに汚染された「政・官・業」が国民の金を奪い、いまの日本は運営されている。
・欧米からみた日本は民主主義国家ではない。フィリピンやインドネシアと同じ「泥棒国家」だ。
・小泉「構造改革」政権が続く限り、あなたの生活はどんどん貧しくなる一方である。
・日本を支配する「政・官・業・ヤクザ」の鉄の四角形の連帯を、これ以上放置していいのか?
・この地上最後の「泥棒国家」の収奪にあなたはいつまで耐え抜くつもりなのか?

煎じ詰めれば、「日本は政・官・業・ヤクザによって支配されている」、そこが問題なのだというわけです。

さて、この本の指摘もさることながら、自分自身がいかにモノ忘れがひどいか痛感させられる箇所が多々ありました。政治家や企業の汚職事件などはいつのまにか喉元過ぎればなんとやら。記憶のかなたに過ぎ去ってしまっていたものを、この本の中で再検証することができました。
重大な出来事を報道しないマスコミへの批判も鋭く、新聞やTVではまず出てこないような事件の点と点を見事に線で結んでくれる箇所もあります。また、日本のマスコミが泥棒の味方であるという指摘は傾聴に値しますね。本文中のキーワードに英語が追記されているのも非常に斬新です。

経済関係の本の中には、国家破綻や預金封鎖で人心を惑わし、著者関係資金団体にお金を吸い上げるようなヤカラが多々いますが、B・フルフォードさんは全く違います。まだお読みでなければ是非ご一読下さい。お薦め。

下記は著者の第一作と第二作。

日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日ヤクザ・リセッション さらに失われる10年