中国製の車と中国車の違い

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4月13日、佐川急便が中国製の電気自動車(EV)を採用するというニュースが流れていました。置き換えるのは現在使われている数の約三分の1にあたる7200台。それに対しネット上には、日本にもいろいろEVがあるのになぜ中国車なのか等という非難コメントがいっぱい。これは現代の生産体制や仕組みを誤解しているのではないでしょうか。

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中国車を嫌うコメンテーターはユニクロの服を1枚も持っていないのでしょうか。iPhoneはどうでしょう?その他中国で作られている物品と無縁な生活を送っている人がいたら、それ自体がびっくり。それくらい中国産の物品は日常生活に浸透しています。

ユニクロの服を中国の服といいますか、またiPhoneを中国スマホといいますか。どちらも云いません。前者は日本メーカー製、後者は米国アップルの製品だと誰しも考えるのではないでしょうか。

実際、ユニクロやアップルは自国内に工場を持たず中国で製造するという分業体制を採用しています(ファブレス)。ここで問題になるのはどこで作っているのかではなく、誰が企画設計して作らせているのか、なのです。

佐川急便のEVも同様。この電気自動車は日本のASFというベンチャー企業が製品開発を行い、中国の自動車会社に製造を委託したもので、もしこれを中国の車といってしまうとファブレスメーカーの製品はみなアウトでしょう。(詳しい解説はこちら )

別のニュースによれば、既にヤマト運輸も日本郵便も電気自動車を採用しているらしい。クロネコさんはドイツ製で今年3月までに493台を採用していますが、1台800万円以上。日本郵便はニッサン製MiEV(既に製造中止)を昨年末で1200台採用し、こちらは1台243万円。

今回の佐川はいくらなのか。佐川は明らかにしてませんが、「現状のガソリン車の軽ミニバンの130万~150万円を下回る水準」だと報じられています。クロネコや日本郵便よりも圧倒的な低コスト。製造を中国企業に任せ、ファブレス効果を十分に生かしています。このコスト差は今後の利益構成にそのまま繋がっていくことでしょう。

蛇足ながら、自動車メーカーのみならず評論家たちは電気自動車を従来のガソリン車のパラダイムで捉えてしまいがち。それでは未来を読み間違えます(きっぱり)。そんな間違いを犯しているトヨタなどの日本車メーカーはいずれ第二のコダックになるのではないかと案じるところです。