水源の保護こそ重要

Water

2003/02/09 東京新聞サンデー版 「みんなが気になる! 飲み水の実態」という特集記事に「水源の保護こそ重要」という拙文が載りました。


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水源の保護こそ重要

 蛇口をひねると、いつでも好きなだけ手に入る水道水。でも、その便利さの背後にはさまざまな問題が潜んでいます。

 飲み水は、まず原料(原水)を確保し、それを使って製造し(浄水処理)、私たち消費者の家庭に届けられます(給配水)。食べ物の品質は、原料の良し悪しや製造方法、品質管理で決まりますが、水道水も例外ではありません。水道水の原料となる河川や湖などの水は、産業活動や人口の増加に伴って水質悪化が深刻になってきました。その結果、水道水に不快な異臭味がつき、塩素消毒でも無害化できない病原性微生物の汚染まで引き起こされています。原水の良くない所ほど、浄水処理に 労力とお金をつぎ込んでいますが、浄水処理の後にもまだハードルがあります。水道管の老朽化が進み、鉛や鉄などの重金属が溶け出して問題になっているからです。

 一方、複雑な浄水処理や老朽化した施設の補修にかかる費用は、今まさに水道財政を破綻に追い込もうとしています。最近、水道事業を民営化するという話がちらほら出ていますが、ホンネはまさしく逼迫した財政問題。道路公団の例をみるまでもなく、当局にまかせっぱなしにしておくと、結局損をするのは消費者なのです。

 浄水器やペットボトル水に解決を求めるのはどうでしょうか。短期的には有効な手段かもしれません。でも、水源汚染は解消されずに残るので、次世代に問題を先送りすることになってしまいます。
 欧米の水道では、水源の汚染に繋がるような開発行為を規制し、水源の保護保全を第一にするという哲学を持っています。日本ではどうでしょうか。原水がどんなに汚染されても浄水処理を強化すれば何とかなる、という技術至上主義がまかり通っています。でもそんな飲み水作りは、もはや限界です。産業生活活動の規制を折り込んだ水源保護法の制定を含め、考え直すべき時がきています。
 私たち一人一人に可能な水源保全もあります。たとえば、雨水利用。飲める水をトイレの洗浄水や庭の撒き水に使うのは、水資源やエネルギーの無駄遣いです。これら用途に雨水を利用すれば、水の使用量が減り、ダム開発を抑え、水源の保全につながります。

 水道水は自然からのもらい水。自然に対する謙虚さを取り戻し、安全で、きれいな水源の確保を図ることが、未来の水道水を考える時の基本になるのです。