ポスト・コロナに必須な抗体検査(第2稿)
2020/04/17
.opinion health/sickness medical
ポスト・コロナ?その2。欧米各国でポスト・コロナだ経済再開だ、という話が出てきました。本当に終局が見えてきたのか。そうだといいのですが、いくら感染者がピークアウトしたからといっても無症状な病原体保有者が巷にウヨウヨしていたら感染拡大の危険を払拭できません。段階的に慎重に話を進めるのは賛成ですが、一気に強気になるのは時期尚早です。
前回は特効薬候補について記しましたが、今回はポスト・コロナの前提となる抗体検査とその応用や活用について少し。
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欧米豪がポスト・コロナを表明し出したのと歩調を合わせ、大規模な抗体検査の実施という動きが出てきました。その検査の実情はどうなっているのでしょうか。
まず米国ではCOVID-19の抗体検査として、Cellexの「qSARS-CoV-2 IgG/IgM Rapid Test」がFDAの緊急認可を受けたことは先日お伝えした通り。さらに Chembio Diagnostic Systems と Ortho Clinical Diagnosticsの2製品も数日前に追加認可されました。他にも研究調査用として6つが認可されています。
また、アボットも15日から抗体検査製品を出荷開始。この製品はIgG分析に特化しているのが特長で、FDAの認可はとっていませんが、FDAのRFA(規制を柔軟に適用する法律)の下で使用できるとのこと(米国の法令がわかりませんので詳細不明、ご免)。
一方、日本ではクラボウの検査キットが既に研究用として登場したのはお伝えした通り(保険扱いの認可は未だありません)。また、セルスペクト(盛岡市)がELISA法を使った製品を出すとの報道も流れました(商品内容は不明)。その他に素性がはっきりしないものが既にいくつか出回り始めていますが、インチキ商品もありそうなので要注意。
ところで、抗体の第一の活用方法は、回復期血漿療法への利用です。感染後に免疫を獲得した者の血液を使って輸血を行う治療で、これ自体は目新しい方法ではありません。
COVID-19に関しては、中国の武漢(ウーハン)にある3病院の重篤な患者10例で使用したところ、重篤な症状の改善に繋がったとの報告が出ています。今後は輸血量やタイミング他、ランダムに患者を選んで調査する必要があるとのこと。更なる展開を期待しています。(出典は”Effectiveness of convalescent plasma therapy in severe COVID-19 patients” PNAS April 6, 2020)
2つ目は、精度が粗いPCR検査の補完です。抗体検査にはそれなりの問題点があり(注)、ウイルスそのものをチェックするPCR検査の代用にはなりません。ただ、感染後に免疫ができたかどうかを調べるのは抗体検査ですし、PCR検査ほど検査要員やコストがかかりません。最近、隠れコロナの肺炎患者からの感染なども問題になっていますが、PCR偽陰性またはPCR未施行の隠れコロナ肺炎を発見するのにも抗体検査は使えます。
3つ目は、「感染証明書」あるいは「免疫パスポート」への活用です。抗体検査を大規模に使えば、感染・非感染の区別がつきます。その上、免疫抗体がある人によって経済活動が安心して再開できるため、欧米ではロックダウン解消に繋がると期待しています。この3つ目の活用については稿を改めてさらに考えてみます(後日)。
日本では感染経路不明の罹患者が急増しているのに、いまだにクラスター対策で封じ込めると唱えている人は現実が見えないのか、それとも見たくないのか。もう、大都市圏ではクラスター対策の時期は過ぎました。クラスター追跡作業に保健所の人員を投入するのは止めて、PCR検査の件数を急増させること、大規模な抗体検査を実施することに注力すべきです。PCR検査だけでなく抗体検査への取り組みも欧米に比べると著しく遅いと感じるのは私だけでしょうか。
外出規制という口先介入で多少なりとも効果が出ているのは、横並び・同調圧力が強い日本の良い面なのかもしれませんが、非常時にはスピード感が大切です。必要なものは緊急認可するなり、暫定認可するなりで対処して欲しい。少しでも早い経済再開を狙うのなら抗体検査の実用化は早急に図って欲しいものです。
(注)COVID-19の抗体検査(イムノクロマト法)について今までに判明しているのは、使い物になるのはIgG抗体の検査のみ。アボット社がIgGに特化しているのは流石というべきでしょう。またIgG検査の性質上、感染直後は検出率が低く、2週間程度経った後でないと確実な陽性判定が難しい。このことは感染研のレポートからもわかります。もう、のんびりと様子見している暇はありません。少なくともFDA(米国食品医薬品局)が認可した検査くらいは日本でもすぐに認可して保険適用してほしいものです。