ベトナム旅行その8 アートとグランヴァン

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ご当地の美術館や博物館を訪れるのは旅の楽しみの1つ。ベトナムのホーチミン市立美術館は内容が濃く、鑑賞するのにたっぷり時間をかけました。一方、現代アートもと訪れたハノイのVCCAはちょうど日本人作家の展覧会を開催中。帰国後その作家のアートがかのワインラベルに採用されたことを知りビックリ。

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フランスやイタリアには有名な美術館や博物館がたくさんあるので、何処へ行こうかと悩んでしまいます。でもベトナムでは長らく続く戦渦でアートに時間やお金を割く余裕がなかったせいか、戦争絡みの博物館は多いけれどアートな美術館はなかなか見つかりません。

ベトナム戦争反対の各国デモの様子を示す展示 @ベトナム軍事博物館 ハノイ

例外はホーチミンの市立美術館。ベトナムで名前を知られる画家や彫刻家の作品がたくさん。卵殻を漆で貼り付けたエッグアートはローカル色豊かですし、西洋絵画とは異なる系譜を持つ作品群を鑑賞するのはアジアの美術館での楽しみです。

グエン・ザ・トリの卵殻画、国宝です。@ ホーチミン市立美術館

内容がふんだんで濃いのに訪れる人が少なく、ローカルな人にとっても海外からの観光客にとってもベトナムアートの人気がないのが少し哀しい。でも、おかげでこちらゆっくりじっくり鑑賞できました。

ハノイでも何か観ようと現地情報サイトを覗いたら、ヴィンコムセンター・コンテンポラリーアートセンター(VCCA)で日本人作家の展覧会が開催中だと知りました。出かけてみると、大型ショッピングセンターの奥にあるVCCAには、不思議な赤い糸で構成された作品が鎮座していました。作者は塩田千春さん、大阪出身ベルリン在住のアーティスト。

塩田さんのお名前を聞いて、あぁあの人かと思うワイン通は多いかも。というのもボルドーのシャトー・ムートンロートシルト2021年のエチケット(ラベル)に塩田さんの絵が採用されると昨年末に発表があったから。こちら帰国するまで知らなかったのでびっくり。知っていたらVCCAでの鑑賞も違ったものになっていたかもしれません(苦笑)。

ちなみにシャトー・ムートンロートシルトはボルドーのポイヤック村のグランヴァンで、年毎のエチケット(ワインのラベル)に著名アーティストの作品を使うことでも有名です。ピカソ・ダリ・ムーア・ミロ・シャガール・カンディンスキーなど錚々たるアーティスト達がエチケットに作品を提供しています。

既に日本人の作家としては堂本尚郎さん(1979)やバルティス節子さん(1991)がいらっしゃいますが、今回の塩田千春さん(ベルリン在住)で3人目。この3人を知らない名前だと思ったら要注意。日本の美術界とそれに追随するマスメディアで作り上げた(日本だけで通用する)年功序列とグローバルなアート界は違うから(だから才能がある者・あると思う者は海外へ武者修行へ出かけ、その中の一部が有名になって凱旋する、というのを繰り返す)。

ワインの値段  2007/12/03

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ベトナムで塩田さんの作品を観て、ある意味こちらもアートとワイン情報のアップデートをしたようなものと思う次第。ネットをみると今年の秋は大阪の中之島美術館でも塩田さんの展覧会が開催されるとのこと。ご興味のある方はどうぞ。