オワコン 2  医師、ワトソン、ダ・ビンチ・・・

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先日オワコンの話を書いたら、オワコンは少し侮蔑的な感じがするから「時代遅れ」の方がいいのではないかという意見を聴きました。でも、それってアナクロのこと。それよりオワコンの方が軽くていいんじゃないですか。

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先日放射線科医師のなり手が少なくなってきたとの話を紹介しました。このトレンド、統計的にはどうかという数字を探せなかったので、件の医師の感覚的なものかもしれません。

でも一般的に云って、パターン認識の定型判断や前例尊重の診断であれば確実に人工知能に置き換わっていくというのが趨勢です。間違った過去の知識に依存するような医者ならコンピュータに任せた方がベターじゃないですか(科学的根拠がないカロリー制限をいまだ後生大事にする糖尿病専門医や栄養士を思い浮かべて下さい)。

例えばワトソン。ワトソンは人工的な意思決定システムで、クイズ番組やチェス等で既に実績を積み上げており、最近では医療分野でも使われるようになっています。医者の人件費コストが問題になるような未来にはワトソンのようなシステムの導入は避けられません。

一方、専門的な手技であると考えられてきた外科手術もダ・ビンチの登場で大きく変化。ダ・ビンチとは1999年にIntuitive Surgical社が販売開始した手術用ロボットのこと。こんなのが当たり前になってくると、余計なことを考えてミスを犯す人間よりも機械の方が確実で安心という話になりかねません。事実、トレンドはそういう方向です(私はイヤだな)。

でも、関連業界はウエルカム。儲け話に繋がるから。そのダ・ビンチが来年にも特許切れになるということで各社色めき立ち、関連マーケットが賑わっているらしい。グーグルとJ&Jが組んだVerb Surgical社はその追撃の先兵でしょうか。

要するに、オワコンがあるなら登場するものあり。未来を見るにはオワコンを懐かしむのではなく、新しく登場する方こそ問題にすべきです。これから生き残る医師とは医学的知識や技術はもちろん、IT(ICT)やAIに精通することが必要条件。願わくは、機械のエラーや暴走に対抗できる科学的素養も欲しいなぁ。

蛇足ながら、新しく登場したわけじゃないけど昔はなかなか手が届かなかった測定がごくごく普通に行われるようになった話を1つ。先日HbA1cの分析法法についてチェックしていたら、最近はイオンクロマトグラフィー(液クロ分析の一種)が普通に使われているのを知りました。

HbA1cというのは、血中のヘモグロビンにグルコースが結びついたもの。赤血球の寿命が約120日間あるので、HbA1cを調べることで1~2ヶ月間の血糖値のアップダウンを総体的に評価できます。その指標を現在はGC-MS(ガスクロ質量分析計)で日常的に測っているなんて、30年前からすると隔世の感あり。・・・と書きつつ、びっくりって思う、こちらがアナクロな人間である証拠(唖然)。