家づくり実践記(11):風に吹かれて

.EcoStyle

日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/07月号所収)    

 家を建てたり購入したりする時、まず最初に考えるべきは日射や風をはじめとする自然環境の把握と検討です。連載11回目になって何を今更?と呆れられるかもしれませんが、家を建てはじめて改めて感じる毎日です。要するに、自然条件を考慮しないで家づくりをすると、たとえば暑さ寒さ対策を機械的な冷暖房設備に頼らざるを得なくなり、エネルギー大量消費型の住まいとなります。これで果たして「環境にやさしい」のかどうか。

 通風のない・できない家を考えてみましょう。外界からの冷暖双方の熱だけでなく、居住者自身の生活から発する熱によっても室内温度は変化します。呼吸による二酸化炭素だけでなく、家屋内で発生する数々のガスも排気しなければなりません。すきま風ヒューヒューの昔の家だったら、熱や排ガスは自然に排出されますから問題にはなりませんでした。しかし、最近の家は気密性が高く、場合によっては24時間365日いつでもずっと機械的な換気通風装置を動かさなければ、室内の空気は汚染され、結露も原因します。
もちろん、そういう気密住宅でも窓を開け放しにすれば通風できるのですが、交通量の多い道路脇や近隣住居が迫っている場所で、窓を開けっ放しにするのは簡単ではありません。また、冷暖房効果を高め省エネに徹する等と謳い気密性を重視するが故に窓の配置や自然風への配慮が欠けている場合もあるようです。
 逆に窓をたくさん設けた家を考えてみましょう。通風はいいかもしれませんが、夏の日射熱、冬の冷気ももどんどん室内に入ってきますし、逆に室内から熱が外に移動します。これではいくら風通しが良くても中は寒暖厳しい。したがって、前回の日射の遮断・取り込みと通風換気とはペアにして考えなければ頓珍漢な家になってしまいます。これは結構難しい。
当然ながら、自然の風を上手く住居内に取り入れることができれば涼しくなります。また、住居内の温度差を使って風を作り出すことも可能です。石油や電気などの外部エネルギーを全く使わないというのは理想としても、できるだけエネルギー使用量を押さえた換気システムを考えていく必要がありそうです。
  
 拙宅の場合、南窓、西窓には電動ブラインドシャッターを設置し(昼間はソーラー発電で発電するので電気エネルギーは自給)、日射の遮断と通風を確保。寒い時はシャッターを上げたりルーバー角度を変えて日射をできるだけ室内に取り入れ、自然エネルギーを活用。また、家全体をひとつの容器として温度コントロールできるように各部屋の入口や欄間を工夫して、風通しだけでなく室内光量も確保。その他実験的な要素を残しつつ、あれこれ考えてみました。しかし、これらのアイデアの一部は家を建ててはじめて思い至った件もあり、最初にもっともっとアイデアを練っておくべきだったと反省しています。最終的にうまくいくかどうか、実際に住んでみて検証するしかありませんが、さて?