家づくり実践記(10):日射のコントロール

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日本消費者連盟関西グループ『草の根だより』(99/06月号所収)

梅雨だというのに今年は雨が少なく日差しの強い毎日。今年は渇水になるかもしれません。今回は日射の話です。

夏の強い日差しをカットし、冬の暖かい日差しを室内にうまく導き入れる。伝統的な日本家屋が得意とする方法でした。これを実現するためには、家の南面にそれなりの窓開口部を設け、長い庇をかけるのが肝要です。季節毎の太陽の高度変化を考慮したそんな巧妙な方法を忘れて、エネルギー大量消費型の冷暖房設備で誤魔化すのが現代の家づくりかもしれません。
お日様が高くなる夏は南面からの強い日差しを庇で防ぐのは困難ではありません。問題は、屋根面の強烈な日射と昼過ぎからの西日です。屋根に降り注ぐ強い日射に対しては屋根下に断熱材を設けるか、屋根裏を大きく確保して廃熱するか等が必要です。また、西からの日差しは夕方の時間帯に太陽の高度が低くなるため、家の中まで入り家屋内の温度を上げてしまいます。これを防ぐには西側の窓を工夫するか、窓開口部に御簾やヨシズをかけたり植裁を利用したりしなければなりません。それらの対処をしないと、昼間だけでなく夜間でも暑苦しい家になってしまいます。

冬はどうか。太陽の高度が下がってくるので(天動説的説明だな)、夏の日射を防止する庇の下からでも暖かい日差しを取り込むことができます。南面に大きな開口部がミソです。もちろん、曇天や雪の日まで有効な方法ではありませんが、暖房設備を使わないと駄目なんて諦める前に、考えることはたくさんありそうです。
話をはしょれば、冷暖房設備にお金をかけて必要以上のエネルギーを消費するような設計は、いくら木造であろうが自然素材を使おうが、地域全体、地球全体の環境から見れば健康的な住処であるわけはありません。環境問題に留意した家づくりをめざすなら、季節毎に日射を取り入れたり遮蔽することによって冷暖房に要するエネルギーを減らし、あるいは冷暖房設備の必要性を著しく排除する方が賢明です。いわば、『自然エネルギーとの対話』というべきものが住宅設計には求められているのではないでしょうか。

で、拙宅ではどうしたか。
南側の庇はもちろん、屋根の日射は炭化コルク50ミリと空気層で断熱し、西日については可動式のルーバー(外付け)で窓対策を施しました。冬は逆にルーバー窓の角度を調節して日射を取り入れます。夏の日射対策だけであれば西窓を作らないという手もあるのですが、それでは東西方向の通風が確保できませんし、冬の日射を取り入れることもできません。したがって、夏と冬双方に対応できる方法を選択したわけです。伝統的な知恵を現代風に活かすとするとどうなるか、考えたのはそこら辺でした。こちらの思惑通りに 上手くいくかどうか。さて、あなたの家ではどんな工夫をしていますか?

次回は風の話を予定しています。