木の葉のお金

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週刊ダイヤモンド 2015年1/10号[雑誌]特集1 今年こそ! お金を学ぶ/賢く貯める、殖やす、備える、使う/金融商品の基本の「き」リスクを知る/ホリエモン・藤野英人対談「僕らが考える、おカネの本質」/「ふるさと納税」人気自治体ランキング/特集2 サイバー犯罪の脅威日本には2匹のタヌキがいるそうな。1匹は家計という名前のタヌキで、800兆円分のお金を持ち、もう1匹は会社という名前のタヌキで300兆円溜め込んでいるとのこと。タヌキの木の葉っぱとは絶妙な言い回し。所詮お金とは信用の産物ですから何でもいいといえばその通り。

まぁ信用創造は横に置いておいて、これがアベノミクスでどうなるか。それがわからない人はカモだと先日書きました。ちょうど同じ話が雑誌に出ていたので紹介しておきましょう。

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週刊ダイヤモンド新春号(2015 1/15日号)の巻頭対談はホリエモンと藤野英人さん(ひふみファンド)。題して、「僕らが考える、お金の本質」。先のタヌキの話は対談中に出てきます。これがなかなか面白い。そうだそうだと頷きながら読みました。

日銀総裁が異次元緩和と称して大量の国債買い上げを行ったことはご存じの通り。そのことで株価が騰がり、景気が良くなったかのような雰囲気を与えていますが、その一方で景況感は一部だけで庶民までは回ってきていないというのが実感ではないでしょうか。

1231b日銀は何をしようとしているのか。誰にとって何がお得なのかは、日銀(と安倍政権)が何をしているのかを考えればわかります。

日銀の目標は物価の上昇でインフレ2%をめざすことです。当然金利は上がります。現在は10年国債で0.3%台とい戦後最低の金利を更新中ですから、インフレ2%でいったい国債金利はいくらになるのでしょうか。仮に2%とすると、その差1.7%。10年国債を残存10年で持っていると、17%分目減りします(単利計算)。5%だったら、33%減! 原価がその分減ってしまうからです。

そんな大幅減価する国債を持っているのはいったい誰か。銀行や年金などの金融機関です。

インフレになると、金融機関が大量に溜め込んだ日本国債は大幅に減価し、残存期間と金利如何では紙屑状態にもなりかねません。アベノミクスで地方銀行が破綻するかもしれないと噂されていたのは、そういうわけ(私はロイターで読みましたが、NHK等では報道されない話です、念のため)。

そんな危険な状態に救いの手を差し出したのが日銀でした。市場から国債を大量に買い上げると宣言したのです(注)。つまり、インフレになると倒産するかもしれない銀行などの金融機関を国民の血税で救おうというわけです。要するに、つけ回しを金融機関から国民の財布に移し替えるというのが異次元緩和の正体で、多くの国民はそのアベノミクスで経済再生ができると洗脳されてしまいました。

(注)インフレが危険なのではなく、金融機関が国債をたっぷり溜め込んだままでインフレになることが危険なのです。

先の雑誌で藤野さん曰く、

黒田さんが(日銀総裁のこと:有田注)バズーカを2発も撃ったのは、あれは「お金を木の葉にしますよ」ってこと。あなたが貯めているお金を木の葉にするので、それを投資に回すか消費するかしなさいって言っているわけです。(前述雑誌p.30)

つまり、私たちのお金はだんだん「タヌキの葉っぱ」状態に追い込まれているのです。ふだん私が云っているようなことを公な雑誌ではっきり言う藤野さんに敬服します。

さてさて、これは他の国の話ではありません。あなたのお金、おなたの人生にも直接関係してくる話です。景気が回復してきたなんて浮かれていると、とんでもない目に遭うでしょう。どないなことになるのか、あなたはどうされますか? 年の瀬に頭を絞ってみて下さいませ。
1231happa