まやかしのトヨタ

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西洋歴では今年も後数日残すのみ。家の片付けや掃除もしなくちゃいかなぁと思う毎日ですが、新聞テレビの話をまともに聞いていると物事の判断を間違えるという実例を紹介しましょうか。トヨタが来期赤字転落というニュースのことです。

ビッグ3が転けてしまった今、トヨタが世界最大の売上を誇る自動車メーカーであることは間違いありませんが、その会社が来期は赤字に転落しそうだとのこと。これを聞いて世間の人々は今回の金融破綻の深刻さを改めて感じ入ってしまうことでしょう。でも、トヨタってホンマに大変なのでしょうか。

この会社、2007年に利益が2.2兆円となっています。今年はさすがに景気後退で売上が減少しましたが、来期09年は利益1兆円超えと会社自身が発表していたのはつい先日の8月。それが一転して赤字転落というのですから、わずか数ヶ月に事態が急転したようです。

為替が急に円高に振れたから? いいえ、トヨタの為替計算はまだ1ドル100円程度ですから、1兆円利益予想時とさほど変わりません。(90円前後の現在でもまだ100円計算ということ自体、何かキナ臭い別のニオイがしますが、まぁそれは横に置いておきませう)。

急に売り上げがなくなるような状況になったのか? これも違います。昨年夏に米国のサブプライムローン問題が白日の下に晒された時、そのローンを元にした自動車販売が落ち込むことは容易に予想できたはず。ビッグ3は転けてもトヨタは大丈夫だと経営者が考えていたのであれば失格でしょう。生産台数だけで見れば、自動車は既に斜陽産業であることは私が指摘するまでもありませんし。

じゃ何故? 大会社のことですから虚偽粉飾の会計データを使って赤字を装うということはまずないとすれば、答は絞られてきます。赤字になるように決済案件を前倒しにした・・・、これではないでしょうか。会計操作ではよくやると云われている合法的な赤字操作ですね。

え?なぜ赤字にするの?と思った方がいるかもしれません。米国だけでなく世界的な景気後退の中でクルマの販売が難しくなるのは明らかでしょう。でもほんの数ヶ月前までは1兆円利益だと喧伝していたトヨタですから、そこらは既に織り込み済みで戦略を練っているはずです。

でも、ビッグ3が転け、それら合併騒動や従業員解雇の煽りは確実にトヨタにも及んできます。場合によっては一部従業員の引き受けやビッグ3資産の一部引き受けも要請されることでしょう。加えて米国の象徴であった自動車産業が破綻するのにトヨタだけが大幅黒字では米国市民感情も芳しくないと考えることもできます。

そういう諸々を勘案するなら、会計操作で赤字化するのがベターだと経営者が考えるのも宜なるかな。今回の急な赤字転落にはそういった思惑があるのではないでしょうか。

まぁこれはシロウトの推測。ただ、先日のパナソニックの赤字なんかもサンヨー買収を有利に運ぶための戦略だと思いますし、トヨタもそういった流れを見ての判断だったかもしれません。

厄介なのは、トヨタみたいな大企業の怪しい行動に対してメディアがきちんと対応しないこと。なぜ数ヶ月前の黒字発表が2,3ヶ月で赤字転落に変化したのか、本当に予測不可能だったのか。米国の景気後退が原因なら昨年時点で判断できなかった経営者責任はどうなるのか?等々。追及すべき点は山ほどありますが、そういう視点視座はなし。

非正規雇用労働者の解雇や住宅問題のようなセンチメント報道ばかりで、本当に何が起きているのか伝えないメディアの姿勢に大きな裏切りを感じる毎日です。そして被害に遭うのは最後は庶民という構図も従来通り。政治家の愚かさにも呆れる2008年でした。