丸飲み!?

Water

6月20日産経新聞によると、大阪市が大阪府営水道の吸収を府側に提案したとのこと。
はたして記事タイトルの通りの「丸飲み」が可能なのか。記事は大阪府と大阪市の確執を燻りだしていますし、それはたしかにあると思うけど、離れてみるなら・・・。話は遡ること20年前・・・。

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私が大阪府水道部をヤンペしたのは18年前。当時はバブルの真っ盛り。大阪府水道部もイケイケで紀ノ川水源開発やその導水用の水道管計画を進めたり、高度処理と称するオゾン・活性炭浄化処理の追加をめざしていました。

でも、水は既に余りはじめていたし、2000年を超えると人口は確実に減ってくるのもわかっていました。私自身、ダム開発は失敗する、負債でいずれ首が回らなくなると70年代から裁判まで起こしていましたら(注)、本当にそんな事業が必要なのかと云われれば否というしかありません。一方で、琵琶湖総合開発による水源開発費の支払で料金は間違いなく上がることになっていましたし、新規事業の追加によ多大なる借金はいったい誰が支払うのか。真面目に考えると頭痛の種ばかり。

大阪府全体をみても新空港絡みで借金漬けは明らか。誰がどう考えても、このまま行けば確実に破綻するものだと思うのですが、当時そんなことを考える者もほとんどおらず、ましてやクチに出す者は皆無に近い状況でした。クチに出しても煙たがられるのが関の山。あげく破綻に繋がる事業に専念せよと云われると、こりゃ逃げないとヤバイな、私まで責任を問われてくるのはかなわんね、というのが実感だったので自己都合で辞職。

その大阪府ですが、私の予想よりもよくもっています。でも、それは表向きのことで、昨今の橋元知事の言い分に明らかなように既に既に破綻状態というのが正解でしょう。

さて、なぜ外資とか20年前の話と関係あるのか。
20年前、私は西ヨーロッパ6カ国の水道事業を3ヶ月間かけて視察しました。ちょうど英国ではサッチャー政権が水道事業の民営化に踏み切った頃で、フランスやスペインでは既に水道サービスのかなりの部分に民間企業が進出済みという状況でした。なぜそうなったのかといえば、設備の老朽化などで維持管理に多額のお金がかかって財政的に苦しくなってきたこと、つまり水道サービスにお金がかかり過ぎて行政には手が負えなくなってきたことが、その主たる理由です。

役所側は民間企業の力を借りることでその困難を乗り切ろうとしていたのですが、請け負う企業側の狙いは単なる事業受託ではありません。水道サービスを情報関連事業と位置づけていましたし、収支的には英国や仏国で儲けが出なくても世界の他で儲けが出ればよいというもので、まさにグローバルな儲けを狙っていこうというもの。彼らの狙いはアジア諸国も含まれていましたので、こりゃいずれ日本もやられるな、というのが率直な感想でした。ちなみに、私が大阪府を辞めた時、それを聞きつけた某商社から、フランス某企業の代理人にならないかとオッファーが出てきた時には少々びっくりしたものです。もし受けていたら、水道版ハゲタカになっていたかもしれません(苦笑)。

それから20年。世界的な水道企業は日本の商社と手を組み、日本進出の足がかりを掴み、着実に日本の水道事業に進出してきました。表向きは日本の会社のように思えても、おそらくかなりの部分が外資に支配されつつあるのではないかと懸念しています(証拠はありません、念のため)。一方で日本の水道事業の財政悪化もどんどん進んできました。

私がもし外資系水道会社だったら、破綻しかけている水道事業体は格好のターゲットです。大阪府水道部なんかもそう。今回の大阪市との話が頓挫したらどないなることやら。外資は府・市のイザコザを全く別の観点でウオッチングしているでしょう。手傷を負ったウサギはハゲタカの餌食かもしれません。それが今の時代状況なのですから。

(注)現在、淀川水系のダム問題で国交省側と諮問委員会で揉めていますが、私には茶番にしか見えません。だって、当時黙っていた、あるいは賛成だった人たちが今賛成と反対に分かれているのはいったい何故か。そちらの方に関心がある位です。