量的緩和解除というマヤカシ

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メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場
エコはエコでもエコノミーの話。
日銀が来週量的緩和を解除する決議を行うとかで世間が賑やかになってきましたが、そもそも量的緩和とは何か。どんな効果があったのか。解除するといったいどうなるのか、私たちの暮らしへの影響はあるのかないのか。肝心のところをメディアははっきりと伝えません。一方、専門家曰く、量的緩和は日銀の「演技」だ、とのこと。だとしたら、その解除とは何を意味するのか?!…。

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TVや新聞で最近とくに取り上げられる量的緩和。文字通りなら、質的にではなく量を緩めることですが、これでは何のことだか、ちんぷんかんぶん。日本銀行の金融政策ですから、具体的にどんな政策を指すのでしょうか。

調べてみると、市中の銀行等の金融機関が日銀に開設している預金口座の残高に目標を定め、それに合わせて資金供給を行うことで、2001年3月に始まり、当初は5兆円だったが、2004年11月には30〜35兆円に設定されているとのこと(出典は、加藤 出 著「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社2004/12/16)。

加藤氏によると、日銀の量的緩和で大量資金供給を受けている直接の関係者は「効果なし」なのに、株式関係者は英断だとするのはねじれているとのこと。前日銀副総裁も「効果を検証すべき」としていたのに、どうも福井総裁は「誤解」をうまく利用しているのだと喝破しています。

実際のところ、日本における金融システム不安に対する心理的なサポート効果を除けば、量的緩和とはゼロ金利政策だといってもいい。だから、市場の受け止め方も、量的緩和解除とはゼロ金利解除との受け止め方。そうなると日米の金利差が縮まるため、現在ドル買いに向かっている為替相場が調整されることになります。先週来、ドル安に動いているのはそういうわけでしょう。

ところが日銀は、数日前奇妙なことを云い出し始めました。量的緩和を解除する際に長短金利の上昇抑制策を打ち出す・・・のいうのがそれ(日経新聞などで報道 03/01)。おそらく、量的緩和の解除で金利が上がると国が支払う国債の利金が嵩む。それは避けたいとの理由ではないでしょうか。これは奇妙です。というより詭弁に近い。

だって、変でしょ?市中に出回るお金の量を緩和することを止めたいなら、日銀が自ら金利操作するしかない。操作しなくても円金利上昇の圧力が内外からかかりますから結局は金利は上がります。それは避けたいといったところで、マーケットは許さないし、金利上昇を察知したからこそ、円買いドル売りで相場調整に入ったはず。でも、やっぱりゼロ金利のままか、上げてもほんのわずかしかしないという日銀の動きが早晩明らかになってくると、円売りに繋がる可能性も高そうです(私の読みはこっち)。

為替のプロがやさしく教えるドル円ユーロ投資入門
『ドル円ユーロ投資入門』〜為替のプロがやさしく教える〜を著した松田 哲氏曰く、「金利政策に関しては、各国の政府高官や中央銀行関係者が『ウソ』を吐くことが、市場慣行上、そして、一般社会常識上で、許されています」とのこと(フォレックス・ディーラー物語 2006/03/01)。政治の世界も金融の世界も「ウソも方便」。そのまま報道するメディアをウソツキの手先というべきか、それとも信じる大衆を愚かというべきか。いずれにしても、量的緩和解除の先にはインフレが待っています(きっぱり)。

おまけ:
エコノミーとエコロジーのエコはどちらも同じで、古代ギリシア語のオイコス(家)から来た言葉。エコノミーはオイコス(家)+ノモス(法)、エコロジーはオイコス(家)+ビオロギー(生物学:独語)とのこと(玉野井芳郎「エコノミーとエコロジー」みすず書房 1978より)。
物質収支を扱うのはエコノミーもエコロジーの同じ手法ですが、エコロジーの方は極端に技術的に走るか、あるいは倫理的要素や思想的要素が入り込んで論理が曖昧になるような気がします。一方、エコノミーは現世の御利益に直結するせいか、どちらかというと生々しい。でも、面白い。