FBI美術捜査官

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FBI美術捜査官―奪われた名画を追えFBIにはワインの真贋とか絵画の真贋などアート関係の捜査をするセクションがあるそうな。左の本は絵画絡みの盗難や窃盗に関係した捜査実態を克明に解説したノンフィクション。書いたのは元捜査官、登場する絵画がロダン、レンブラント、フェルメール、ノーマン・ロックウェル等々とくれば、面白くないはずはなし。一気に読んでしまいました。

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歪みのある処には犯罪が潜む、というのは世の常です。世界中のお金持ちが(適正価格などというのがない)絵画や彫刻に異様な大枚を費やす傍らで、そこにアキナイを見出す人たちの中に良からぬ者たちが目に余るほど増えてきた、だからFBIも本腰を入れ始めたというわけでしょう。

FBIには10年くらい前までは美術品を取り扱う部局はなく、美術品に造詣の深い個人が片手間で取り組むというスタイルだったのが、関連犯罪の増加とともに組織的な捜査になっていきました。

取り上げた事件それぞれが、映画やTVドラマにそのままなるような面白さ!真贋を追及する推理小説風の箇所の一方で、手に汗握る犯人逮捕劇も登場します。その犯罪対象が有名な画家たちの絵画とくれば、親近感を持って愉しめます。それは本を読んでのお楽しみ。

ところで、捜査官がバーンズコレクションで研修を受ける下りがありますが、その研修で真贋の見分け方を学ぶわけではありません。学ぶのは作者の思惑、絵画の歴史的位置づけ等々で、そのことを通して捜査官の見る目を養うというのが目的だそうです。

たとえば、バーンズさんが云ったという「見る学習」、つまり「(絵画を)見るとは学ばなくてはならないものであり、呼吸をするがごとくの自然な営みではない」という話はアートの鑑賞そのものに関わる命題であり、考えさせられます。この辺の解説は、そこらの美術書よりもずっと面白い。

下世話なことですが、過去の捜査を暴露したり、潜入捜査の手順をステップ別に示したりして、今後の捜査は大丈夫なんだろうか、この本の著者は悪い奴らに報復を受けないのだろうかと心配になってきました。が、そう考えてみると、本の内容の信憑性にはクエスチョンも・・・。やはり確かめようのない話はフィクション混じりと見るのがいいのかもしれません。

でも、絵画に興味のある人にはきっと読み応えのある本になるはず。