戦場から女優へ

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戦場から女優へお昼3時前にFMラジオから「サヘル・ローズです」という声が聞こえてきます。「ヘ」の音が鼻に抜けるように飛ぶのが特長で、変な日本語だなぁと思っていたら、なんとまぁイラン人。日本語がうまいので私が勘違いしていたんですね〜。
そのサヘルさん、幼い頃、空爆で町が破壊されて天涯孤独になり、当時学生だった今の義理のイラン人の母に救われ、縁あって日本へ。そこから展開される人生は、まるでイランと日本の2カ国にまたがる現代版「おしん」。涙なくして読めません。

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この本は先日LiLiKoさんの本をアマゾンでチェックする時にいっしょに表示されていました。あれっ、サヘル・ローズって、あのラジオの変わった声の人かと思って調べると……、彼女の波瀾万丈な人生を知って驚いた次第です。

幼い頃イラクの空爆で400人の町が一晩で瓦礫の山。当時学生だった女性が生き残った少女〔サヘルさん)を発見。その後少女は孤児院へ入れられるのですが、救出した女性との養子縁組を果たします。母親の実家はイランでも裕福な家庭だったようですが、孤児を養子にした娘を縁切りにしたため、母子は母親のフィアンセを頼って来日。でも、相手の男が連れ子を嫌がり直ぐに破局。そこから日本での「おしん」生活が始まります。詳しくは読んでのお楽しみ。

LiLiKoさんの人生も圧倒されるものがありますが、サヘルさんも負けず劣らず凄まじい。いじめにあったり、お金に困ったり、自殺しようかと母子で悩んだり、どん底土壇場まで行くのですが、なぜかしら暗くないし、じめじめしていない。

思うに、サヘルさん、人を憎むとか恨むとか、母の教えもあるのか、そういうのがあまりない。一方で、根性で状況を切り開くという体育会系の話でもなく、流れに身をまかせて進んでいくという感じでしょうか。それがまた、周囲の人たちの暖かさを呼び込むみたい。

特記すべきは、自分の人生を賭けてサヘルさんの生を支える義理の母フローラさん。彼女もサヘルさんに劣らず、「おしん」しています。なぜそこまで養子の子に関わるのかというのは本で出てきますが、それにしても素晴らしい。

スウェーデン女性やイラン女性が日本語で、今この現代における自らの人生を語り、それを同時代の日本人が読むという姿に明らかなグローバル化の浸透を感じてしまいます。作り物の「おしん」よりも実在の「サヘル・ローズ」、お薦めです。