玄海町とギリシア

.opinion 3.11

九電の玄海原発を廃炉にしたら財政が破綻するという財政試算を佐賀県玄海町が発表。「まったく原発に依存しないではやっていけない」(町長弁)とコメントしたそうな(毎日新聞 2012/05/25)。だからといって、危険な原発を再稼働させてくれとか、もっと増設してほしいというのはダメだよ。でも、もし原発なしの町をめざすのなら……。

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以前、福井県敦賀市の例で紹介したように、原発がある自治体には、電源立地等初期対策交付金、電源立地促進対策交付金、電源立地特別交付金、原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金、それに固定資産税等々の補助金が支払われます(国からということは国民のお金から、という意味です)。

原発があることで雇用が生まれ、宿泊飲食その他関連産業にもお金が回っていきます。おまけに既に紹介したように自治体有力者やその関係企業に裏ガネが流れたり、ヤクザ経由のお金もあるらしい。

でも安易にお金が入ってくると、財政も町の暮らしも原発一辺倒になってしまいがち。それまで細々とした観光地だったり、それなりの地場産業があったとしても、物心両面で原発への依存が高まり、いつのまにか原発なしではやってはいけない状況に陥ります。それが玄海町や大飯町などの実情なんでしょう。

喩えは適切ではないかもしれませんが、原発マネーに染まってしまった自治体とは薬物中毒患者のようなもの。もし、ヤク切れの中毒患者がもっとヤクをくれ〜と騒いでも、自業自得と突き放すこともできるでしょうが、ヤクなしでも生きていけるように手助けをして欲しいと云ってきたら、国(や国民)は何とかしなければなりません。

だって、原発立地自治体が原発を受け入れたのは国策だったからであり、そこから簡単に抜け出せないほど地場産業を疲弊させてしまったのも原発ゆえ。

今回の例でいえば、玄海町だけに総てを押し付けるのはお門違いです。まず問題にされるべきは、電力会社(玄海なら九州電力)であり国の責任です。その上で、玄海町が原発依存を脱却しようというのなら、新たな地域振興策をいっしょに考えていけばいい。

同じ新聞で清水修二教授(福島大)が「廃炉作業に伴う雇用」を提示し、「国は早く脱原発に向けた計画を立て、立地自治体の財政が急激に落ち込むようなら法律を変えて電源三法交付金を充てられるようにすべきだ」としているのは卓見で、傾聴すべきでしょう。

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さて、玄海町の話を考えていると、ギリシアのことが頭に浮かんできました。

公務員の数多しでまっとうな徴税システムなし、国の財政事情を隠してユーロに加入し、他国からお金をたかって延命を図るギリシア。先日マイケル・ルイスさんの本を引き、その紹介をした通りです。

最近の選挙でギリシア国民は緊縮財政反対で怒り選挙で反旗を翻しました。でも、これからまっとうにしていこうという意気込みがあるのかないのか。なければ、他国を犠牲にする勝手なエゴでしかありません。急激な状況変化は勘弁してほしいといっても、既に数年放置では何の説得力もありません。

でも、そういうゴタゴタに乗じてお金儲けしたのはゴールドマンサックスなどのヘッジファンドであり、ギリシアとの金利差をうまく利用したドイツ、フランスなどユーロ圏の金融機関ではなかったのか。となると、ギリシアのマヤカシ会計を全く知らなかったどうかも怪しい。今回のギリシア危機だって金融マフィアによって仕組まれたものなのか、と云いたくなってしまいます。

玄海町とギリシア、それぞれ原子力マフィアや国際金融マフィアによっていいように利用され、メチャクチャにされた地域なのか。改めてそんなことを考えてしまいました。だったらなおのこと、マフィアの軛(くびき)から脱してほしいと願う次第です。

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ところで、玄海町のHPを覗くとフランスのグラヴリーヌと姉妹都市らしい(玄海町HPではグラブリン)。
そのグラヴリーヌには西ヨーロッパ最大の原発があります。だからこその姉妹都市なのでしょう。
グラヴリーヌはパリからは遠いけど、ベルギーのブルージェからなら約80km。つい最近テクニカルトラブルで停止したとかいう処(出典:ルモンド誌)。どっこもかしこも問題だらけ。玄海もグラヴリーヌも原発から脱却してほしいものです。