下りと上り

.Books&DVD… .opinion 3.11

不合理な地球人 お金とココロの行動経済学『下山の思想』が受け入れにくいはなぜか。上りは勝ちで下りは負け、「上京」は希望と夢に溢れているけど「都落ち」はなんか惨め等、そういう価値観がいつのまにか私たちの頭に植え込まれてしまっているからでしょう。単に方向性の問題だけ、なんだけどねぇ。


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私のサイトで何度も引き合いに出してきた五木寛之さんの『下山の思想』、先日NHKで取り上げているのを偶然見ました。本が売れているという話と御本人へのインタビューで構成されていたんですが、この国のこれからを考えようという切り口もなく、当然311との絡みもなし。単にエンターテイメント本の販売紹介みたいな感じで、さすがNHKだなぁ(皮肉です、念のため)。

『下山の思想』を私流に言い換えると、

ということ。不可能じゃないんだけど厄介です。下りは降りる時に使うものだから。そのことを身に滲みて理解している人はいったいどれくらいいるんだろうか。

なぜ下りに対するイメージが悪いのか。
おそらく右肩上がりの経済成長を経験してきた者にとって、衰退に繋がるようなトレンドは受け入れられない・信じたくないというのがあるのでしょう。成功経験を持つ人ほどその度合いは強くなるのかもしれません。

おまけに下りという概念そのものがマイナスのイメージと結びつき、負け組の一員のような気持ちになって落ち込んでしまうというのもありそう。そういった精神衛生上シンドイ方向に歩を進めるなんて、仮に理屈がわかってもやりたくないということになるのではないでしょうか。ここらの理論的背景は行動経済学などで既に明らかにされていますので興味のある方はご参照下さいまし。

ともかく、下り坂は下がるのが自然です。

前向きと後ろ向きで意識が逆になるのなら、下り坂を「前向きに」下ればいいだけじゃないですか。下りがイヤな理由が見栄や勝手な思い込みなら、それを改めるしか道はなし。あるいは、どうしても登りたいのなら下り坂を諦め、上り坂を捜してそれを登る方を選ぶのがいい。

経済が疲弊し、これからの成長が見込めない場所ではなかなか職探しも難しい。逆に、これからGDPが増え、お金になる場所なら職を得るのはずっとやりやすい。これも簡単な道理。日本の中にもそういう場所はあるんだけど、国境を超えれば、もっと簡単に見つけることが可能だというのを明快に指し示していたのが先の渡邊さんの本でした。

繰り返しますが、下りと上りは方向性の違いだけ。そこに余計な価値観を持ち込むと思考停止を導きます。方向性のみで下りを毛嫌いしてしまうと、あなたにとって大切なチャンスを失してしまうかもしれません。前に進みたいなら、あなたにとっての上り坂を見つけること、これが大切。退避や避難もそういう観点から見直すことができるのでは? 

・・・って、何か説教っぽいなぁ(性格ですな)。