モノゴトの両面

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驚いた。今年のアカデミー作品賞を受賞したCODAを観に行ったらキメのシーンで登場したのが、ジョニ・ミッチェルのBoth Sides Now(邦題は「青春の光と影」)。歌詞がストーリーとぴったり整合。脚本家や選曲者の手腕に唸ってしまいました。ちなみにCODAは Children of Deaf Adults の略とのこと。

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ジョニ・ミッチェルのBoth Sides Nowは私の好きな歌の1つ。既に本サイトでも2度触れていました。

時をこえて(2007/12/10)
雲の影(2015/05/29)

雲を表側から裏側から、あるいは上から下から、いろんな面から見たけど正体はわからなかった。愛も人生も同じで何もわからない・・・という内容の歌ですが、これが映画のラストシーンで効果的に、そして感動的に使われていました。びっくりするとともに何か嬉しくなってしまいます。

歌そのものはジョニ・ミッチェルやジュディ・コリンズの方がこちらの好みですが、主人公役のエミリア・ジョーンズさんのもいい。チェックしてみると俳優&歌手だそうで、なるほどなるほど。ただ、「at all」の部分の歌い方が本家と違うので少し引っかかりました(個人的印象です、念のため)。

肝心のストーリーは、耳が聞こえない家族の中で育った1人だけ聞こえる娘さんの話。彼女の歌唱力に才能を感じた音楽教師がバークリー音楽院へ行くことを勧めるのですが、彼女はろう者(デフ)の家族を支える重要な一員で簡単に地元を離れるわけにはいきません。耳が聞こえないので娘の歌の良し悪しが判断できず、進学に反対していた両親。でも娘のコンサートに参加し、娘の歌唱が人々に感動を与えているらしいことに気づき・・・、という流れ。

歌のシーンで突然まったく音が消える演出は特筆モノ。耳の聞こえない人が歌を聴くというのがどういうことか、いっしょに考えようというわけでしょうか。また、オーディションで歌うBoth Sides Nowの歌詞が彼女の人生をそのまま表しているように聞こえるのもマル。

36年前にアカデミー主演女優賞を獲った、ホンモノのデフなマトリンさんが母親役というのも面白い( Children of a Lesser God、邦題は「愛と静けさの中に」)。

映画を見終わって気づいたこと1つ。Both Sides NowのBoth Sides はモノゴトの両面を指しますが、この映画の場合、聞こえる聞こえないの両面をも含んでいたのかと改めて考える次第(迂闊でした)。

(蛇足)バークリーがボストンという映画の中のセリフで、今までバークリーとバークレイを混同していたのに気づきました(これまた迂闊)。