語るに落ちた10億円

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先日来世間を賑わせている持続化給付金の行方について、先日、東京新聞は実態のない幽霊法人が手に入れる金額を6億5千万円と計算したことを紹介しました(東京新聞 5月30日)。ところが、昨日の国会で安倍首相は福島瑞穂議員(社民党)が「20億円の中抜き」と批判したのに対し、「そのうち10億円以上は銀行に手数料として払っており、(批判の)前提自体どうなのかという感じだ」と反論したそうな(時事通信 6月4日他)。受託先は幽霊団体だから、首相自らピンハネは10億円と認めたわけで、語るに落ちたということでしょう。

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東京新聞 2020年6月5日より

委託された会社や団体が手数料を取るのはアキナイ上当たり前ですから、わからないことではありません。ところが今回の受託者は幽霊法人。何をしているのか代表理事ですら知らないという幽霊団体です。

実態がないのに業務遂行ができるはずもなく、電通にそのまま流すだけ(仲介手数料の20億円から経費を引くという説明自体も怪しい)。その電通は、さらに電通子会社などに業務を回していくことで手数料38億円を獲る、という仕組みになっています(出典は東京新聞 2020年6月5日)。

これではピンハネの繰り返しですから、当初予算はピンハネ分だけうなぎ上りになります。おまけに今回の(社)サービスデザイン推進協議会は、法律で義務付けられている決算報告の公告ですら、2016年の設立当時から今までに1度もしていない。そんなトンデモない法人が769億円の国家事業の委託を受けられるなど、普通では考えられません。

普通の会社なら、毎年きちんと会計報告を出すし監査も受けるし税務署の目も光っています。でも、この団体は会計報告を今までに1度も出さずに済んできたような団体ですから、慌てて数年分の会計報告を出したところで、信頼性はゼロです。つまり血税から出たお金が何にいくら使われたのか、いや本当に使われたのかどうかさえ曖昧になってしまうのです。


実は、この仕組みこそが経産省と電通が作った錬金術。トンネル会社・団体を利用して天下り先の確保や利権供与、あるいは裏金作りに勤しんでいるのが官僚や政治家連中です。そういうピンハネ・タカリの構造的なトリックに切り込めないなら、今回の問題の根絶は見込めません。だって、真っ黒なブラックホールに透明性を求めても無理というものです。

先の国会での首相発言は語るに落ちたというか、控え目な推計を行っていた東京新聞の6億5千万よりも大きな10億円程度のピンハネを認めてしまいました。幽霊法人がピンハネした巨額なお金がどこに流れたのか、はっきりさせて欲しいものです。

さらに云えば、観光などの消費刺激策「Go To キャンペーン」もいっしょ。こちらはもっと金額がでかい。観光業がコロナ禍で四苦八苦しているので支援しようというのはわかります。でも、仲介を行っている代理店を通さないと支援金(予算1兆円超)が出ない仕組みになっており、どこかの誰かがまず多額の手数料を入手する仕組みになっています(先の電通と同じ構造)。

その手数料たるや、「上限3095億円」!  なんでも、「経済産業省が(事業費の)18%くらいの想定をした」とのこと(毎日新聞 6月3日)。つまり、観光業の中心である旅館やホテル、あるいは関連の飲食業や土産関連産業への支援金が3095億円削られることになるわけです。

18%もの手数料はいったい誰の手元に入るのか。まだ細部がわかりませんが、本当に旅行代理店が18%も手数料を獲るのでしょうか。こちらもキナ臭いニオイがプンプン。

持続化給付金にしても「Go To キャンペーン」にしても、コロナ禍泥棒とでも云うべき税金搾取が横行しています。他国の問題はたくさん報じても自国の問題には腰砕けなのがこの国の報道の現実。頭が痛い。