積年のマヤカシ

.opinion

今日から石油にかかる暫定税率が消え、ガソリンは25円安くなります。この税金は元売り出荷時にかかるらしく、GSの地下在庫がすぐに25円安くなるわけではありませんが、それでも今日から値下げにする所もあるとのこと。以前、某首相が郵政「民営化」で日本を壊す、自民党を壊すとウソぶいていましたが、今回の暫定税率撤廃の方がはるかに日本をいい方向に壊す可能性が高いと私は思いますね。そのことをきちんと伝えないメディアにはいつもながらガッカリです。

政府自民党は4月末以降再議決で税率を戻すと云いだしました。そもそもこの税金は「積年のマヤカシ」なのだから、これを機会に枠組みを変えてしまえばいいのですが、なかなかそうはいかないようです。

この件の抵抗勢力は政府自民党公明党、それに各自治体の知事ら、そして道路利権に連なる諸々の業者。道路を造ったり橋をかけたり、あるいは車を売って商売するような会社もそうでしょうし、もっといえば、この国の車社会を支える関係者の利権になっているので、それらはすべて抵抗勢力として働くのかもしれません。

でも今日から25円安のガソリンが出回りはじめると、その値段が基準になり、再議決で25円またアップするというのは庶民感情としては耐えられなくなるでしょう。既に自民公明&各知事連合の思惑ははずれています。そんなことをすれば、税率戻し奔走の議員や首長は近い選挙で痛い目にあうでしょう。庶民のエゴ・本性とはそういうものです。

ガソリンスタンドGSの中には、高値在庫があるから安売りできないと云うところがあります。長野県だったかどこだったか、県全体でそう主張している地域もあるとか。彼らは経済法則を知らないのでしょうか? つまり見えざる手のことです。

25円安いガソリンを売る店とそうでない高いガソリンを売る店があるとしましょう。25円というのは40リットルで1000円も違うんですから、いっきに安い方の店に客は流れます。そうなると高い店のガソリンは売れません。売れないと在庫はざばけないから結局高値ガソリンは残りがち。そうするといつまで経っても値段は下げられません。これでは悪循環。

在庫量を睨んで、いくらまでなら値下げをすることができるのか。3月末から少しづつ安売りを始めておけば、4月1日からの在庫が少なくできる。既にそういう手をとったGSは単に客サービスというよりも生き残りをかけた賢い計算だったと私は考えます。いずれにしても高値のままのGSは早晩値下げに踏み切るでしょう。それが経済原則だし、そうでないと生き残れません。

だいいち、暫定税が30年近く亡霊のように生き残ってきたのはなぜか。それが公共事業という名前の道路事業の予算となり、関係者に多大な利益を与えるという美味しい税金だったからでしょう。国民は税金と云われて納得してきた・納得せざるを得なかった。ところが原油価格が高騰し、他国との価格差も明らかになってくると、暫定税率なる権力者にとっての「打ち出の小槌」の存在が見えてきた。そしてそれを政治の道具に使えると判断した小澤さん(か誰か)の卓見が今の状況を生み出したのは間違いありません。

だとすると、メディアは対抗する民主党らの動きを衆議院解散のための政争のようにとりあげるのは正しくありません(まぁいつも正しくないと考えておくのがベター)。だってその通りであり、その通りでもない可能性もあるから、です。一方、暫定税率のいかがわしさ、マヤカシを真摯に伝えようとしていない国営放送などは、やはり権力放送でしかないと思うこの頃です。

暫定税率をなくしてしまうという行為は70年代以降の日本の利権構造を作り直そうという動きに繋がります。1リットル25円かけることのガソリンの消費量で年間約1兆円弱くらいとか(暫定税全体では3兆円弱)。これが道路関係財源とその他関係者の細々した利権財源に使われてきました。そこに業界の思惑や利権もへばりついているわけ。

本当に必要なものであれば一般財源の中で泳ぐのが筋ですが、道路関係者が自由に使える別財源としたことでいったい何が生まれてきたのか。さして必要でもない道路や橋。天下り機関やどうでもいいような用途への使用など、既に一部のメディアが暴いてきた通り。地方自治体はお金があれば事業ができると云わんばかりのタカリ構造に浸りきっています。またそれが政治利権となり、議員や首長にとっても欠くことのできないものになっていますから、そのまんま東さんが暫定税率撤廃反対を云うのはまぁ当たり前の話。

この構造問題にどこまで肉迫し改善できるか。5月あたりの総選挙も見えてきました。事態がうまく進むことを強く望んでいます。