WUNDERKINDER

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命をつなぐバイオリン [DVD]命をつなぐバイオリン、原題はWunderkinder。日本語でいえば「神童」。

映画は、神童と呼ばれた2人のユダヤ人のこども、1人はバイオリニスト、もう1人はピアニスト。ウクライナが舞台の悲しい物語です。

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ユダヤ人の迫害について描いた映画は多いのですが、未来を絶たれたこどもを主人公に据えているところがこの映画の特長です。

wnder舞台はウクライナ。第二次世界大戦直前から話はスタート。神童と呼ばれるバイオリンの男の子と同じく神童のピアノの女の子、そして彼らと仲良くなったドイツ人の女の子、そしてそれぞれの家族を中心にして話は進んでいきます。

戦禍は彼らとその周囲を巻き込み、どんどん広がっていくのですが、興味深いのは最初に命を狙われたのはドイツ人だったこと。ドイツがソ連との不可侵条約を破って戦争を始めたことで、ソ連支配下のウクライナがドイツ人を捕まえ始めたのです。そんなドイツ人を助けたのは、心あるユダヤ系ウクライナ人でした。

ところが、ドイツがウクライナに攻め込んでくると状況は一変。今度はユダヤ人が迫害されることになります。命を助けられたドイツ人家族は、救ってくれたユダヤ人家族を匿おうとするのですが、・・・・。「大人がバカだから」戦争になる、という少年の言葉が胸に響き、ピアノの少女が作曲したモノ哀しい旋律に載せて進行する悲しい悲しい話に声を失います。


ところで、この映画で別の新たな関心が出てきました。それは、ウクライナという大地が世界的な音楽家や芸術家を産み出してきたことの再確認です。プロコフィエフ、バーンスタイン、ホロヴィッツ、あるいはアイザック・スターン等々、みんなウクライナ系じゃないですか。そんな有名アーティストの一覧を見ていて、ウクライナ問題の別の側面を感じざるを得ません。

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この映画は2011年発表。現在のウクライナ問題と合わせて考えると話は複雑です。というのも、ウクライナ新政府はネオナチの極右民族派の武装勢力といっしょになって親ロシア派を打倒し、ロシアとの関係で一部内戦状態が生まれてしまいました。その新政府が監獄から開放した元首相のティモシェンコは祖父がユダヤ系。ロシアvsウクライナ民族派&ネオナチという構図に、ユダヤ系が関与しているのでしょうか。いやいやそんなシンプルなわけはない。国家と民族それにイデオロギーまで絡んでしまい、問題が複雑化しているんでしょうね。

それにしても、ユダヤ人の音楽家とナチスを取り上げた映画は記憶に残ります。以前に取り上げた「オーケストラ!」がそうでしたし、「戦場のピアニスト」もそうです。そして、今回の「命をつなぐバイオリン」。ユダヤがどうのこうのという以前に、人の尊厳を奪い取る戦争という禍々しき行為に怒りを感じてしまいます。

国家が戦争をしないように確固たる歯止めが必要です。そういう意味で、誰が何と言おうと、日本の「平和憲法」は偉大です。この映画を観ていて、改めてそう思った次第。

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(追記 5/6)
投稿後ネットをチェックしていたら、この映画は東京では昨年名画座系で上映していたこと、また主人公のエリン・コレフさんはホンマモンのバイオリニスト、それも12歳でカーネギーデビュー等を知りました。どうりで演技には見えなかったわけだ。