埼玉プール事故:自治体の怠慢

プール事故

毎日新聞がまたプール行政の怠慢を白日の下に晒しました。

一番の監督権限のある地方自治体の中にはプールの安全管理に関して対応をとる仕組みがない、という点です。
愛知県等の数少ない例外もありますが、自治体の怠慢と不作為がプール事故の背景にある限り、フタの固定は一時しのぎに過ぎないのかも。…

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まず、プールというのは国立のものを除けば、基本的に自治体の管理下に置かれます。したがって自治体がそれ相応の安全対策を行えば、私が云うところの「あぶないプール」などというのはあり得ません(吸排水口に関して、という限定的な意味で)。ところが実態はそうではなく、全国津々浦々に「あぶないプール」だらけ。その実態は今回の文科省の緊急調査でも明らかになりましたから、私の云い分がオーバーでないことはおわかりいただけると思います。

さて、自治体はプールの安全管理について、いったい何をしてきたのか。今日の毎日新聞によると、「安全面で不備があった場合に罰則を伴う条例を持つのは5都道府県」だけで、「指導要綱で運用するのは22道府県、他の20県は条例も要綱もなく、「危険なプール」への対応の甘さが明らかになった」(毎日新聞2006年8月13日)と記してします。ひどい場合では、届出すらなくてもプールの開業を許している自治体もあるという記事に、唖然とします。

わかりやすくいいましょうか。
吸排水口の安全柵が取り付けられていないような「悪魔の穴」を持つ「あぶないプール」でも、開業届けを出せば簡単に通ってしまう自治体がほとんど、ということなのです。<届け出がなくてもプールが開業できるという自治体は論外で、こんな自治体のプールには行くべきではありませんね。

実際埼玉県ではそうでした。指導要綱には吸水口の安全対策についての記載があるのに、開業届の届出項目にないからチェックしていないと開き直ったのは埼玉県の所沢保健所。無責任極まる!と思ったのは私だけでしょうか。開業届で危険なプールをストップできないとすると、現場では痛ましい事故が予定されているようなものです。

さらに今回の記事で恐ろしくなったのは、その指導要綱すらない自治体が20もあるとのこと。いったいどうやってプールの開業を審査しているのでしょうか。それともプールの開業はノーチェックのスルーパスなのでしょうか。これでは被害が繰り返される訳だ、と思わざるを得ません。

今回の事件で文科省など国の通知が話題にされてきました。でも、これは通知であって強制力は持ちません。もしあぶないプールがあれば、各自治体が国の指針を元にして開業を止めたり、改善命令を出さなければなりません。こちらは条例や要綱で強制力を持たせることができますし、これしか「あぶないプール」をストップさせる方法はありません。でも、その歯止めは愛知県などを除き、全くなされていなかった。

国の責任を問う前に、実質的な管理権限を持つ地方自治体の責任を問題にするのが先でしょう。今はフタの固定や吸い込み防止金具が問題になっていますが、吸排水口の危険性の認識がなければ、いずれそんなに遠くない時期にまた悲しい事件が生まれるのではないかと、今日の毎日新聞を読んでいてそう感じました。

「愚かな怠け者たち」の代表が誰であるか、
もう皆さんもおわかりになってきたのではないでしょうか? 
でも、いまだ組織的過失の全貌は表に出ていません。今回のような「あぶないプール」を設計し、それを建築した会社、そしてそれをそのまま認めてきたふじみ野市(大井町?)の責任はこれから問われてくるものと考えます。