世界の半分が飢えるのはなぜ?

.Books&DVD…

世界の半分が飢えるのはなぜ?―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実ジャン・ジグレール 著 たかおまゆみ 訳
合同出版 2003年8月5日

エコロジーを考える時、身の回りのことは当然ながら、地球全体のことも無視することはできません。ところが、世界の半分は食事もままならない情勢ですから、「環境にやさしい」等という言葉が空虚に聞こえます。その飢餓の話です。…


この本で取り上げられている国は、ロシア、グルジア、旧ユーゴをはじめ、ブルキナファソ、セネガル、エジプト、スーダン等のアフリカ諸国、そして北朝鮮やフィリピン、カンボジアのアジア諸国などです。恥ずかしながら、ブルキナファソがいったいどこにあるのか、地図を見るまで私は知りませんでした。

昨年だったかその前だったか、米国映画に「ブラックホーク・ダウン」というのがありました。決して諦めない米兵の戦闘行為をいくら感動的に描いても、ソマリアの窮状と正義を唱える米国関与の責任は見えてきません(米国はその後逃亡撤退)。

この本は、そのソマリアの飢餓から話をはじめ、飢餓の責任が「内戦をおこしている首領たち」であることをわかりやすく説いていきます。紹介されている国連食料農業機関(FAO)の統計によると、1999年時点で深刻な飢餓状態の人々は3000万人、慢性的な栄養不良の人々は8億2800万人とのこと。視覚障害に焦点を当てると、1980年以降約1億4600万人が栄養不良とそれが原因の病気で視力を失ったとのこと。つまり、この20年余りで日本の人口よりも多い数の人々が失明したことになります。何ともコメントしようがありません。

この本では、そうした飢餓に苦しむ国々の悲惨さをたんたんと紹介しながら、飢えは決して「運命」でもなければ「自然淘汰」でもなく、不公平な食料分配にあると著者は明言しています。おそらく、GMO問題もそれを拡大化させてしまうことでしょう。

この本は、小さなこどもが父親に、飢えの話を質問するという形式になっています。答える父親役は、著者のジグレールさん本人で、スイスとフランスで教鞭をとる社会学者です。メディアではなかなか伝えられないアフリカ情勢を知らない私たちにとっては、びっくりするような話に唖然としてしまうかもしれません。でも、それら問題の複雑さにもかかわらず、説明がわかりやすく、そして心にしみ通る内容になっています。そこが救いです。

最後についている勝俣誠氏(明治学院大学)の解説は、短いながら秀逸。これを読むだけでも本を読む(買う)価値があります。というのも、日本にいながら、世界の飢餓をどう考えたらいいのかという点について、その切り口とアドヴァイスを与えてくれるからです。

食料問題や環境問題を考える時、自分のことだけ日本のことだけを考えていたのでは解決できないことを認識しておくためにも、是非どこかで見つけてお読み下さい。強くお薦めします。